スーツケースに込めた日本の心:プロテカ(PROTECA)、20年の挑戦と進化
一般的なスーツケースの内装生地はミシンで縫い付けるだけですが、プロテカではクッション製のあるウレタン生地を手貼りして仕上げる製品も多く、素早く美しく貼り付けるには高い技術を要し、技術習得には約3年を要します。
手貼り内装は赤平工場ならではの特徴であり、海外製との大きな違いです。 また、スーツケースのフレームは一般的にアルミニウムが使われますが、プロテカではレーシングカーのホイールにも使われる軽量硬質なマグネシウム合金を採用しています。アルミニウムに比べ強度が高く軽量で、常温では変形しにくいという特徴があります。 組立工程の最後に職人が経験と知識を基に専用のハンマー・工具を用いて錠前の取り付け位置、フレームの隙間やズレ等を修正するのですが、このような細部にこそ、日本製ならではの実力が発揮されます。
強く叩いてもフレームに跡が残らないのは、マグネシウム合金の強度の高さによるものです。一般的なアルミニウムフレームの場合はフレームを修正するのではなく、錠前部分を調整してスーツケースの開閉をスムーズにしています。そのため、フレームに歪みがあると、錠前がスムーズに閉まりません。海外製のスーツケースはフレームの歪みを直さずに、錠前を調整して閉まるようにしているのです。
スーツケース革新の軌跡とトラベル文化の進化
ーブランド誕生から20年間で、スーツケース業界やトラベル文化にどのような変化があったのでしょうか? この20年間は大きな変化が見られました。かつてはフレームタイプのみだったスーツケースに、ジッパータイプが登場したことで軽量化が進みました。たとえば、プロテカは2006年に初のジッパータイプスーツケース「スタリア」を発売しています。 さらに、2007年~2008年にかけて業界初のキャスターストッパーを搭載したソフトラゲージ「ユースフリー」「リムーブ」を発売。日本人ならではの細やかな配慮が反映されたこの機能は、現在では多くのスーツケースに搭載されています。 また、航空会社による機内持ち込みサイズや重量制限の厳格化、LCCの台頭など、旅行を取り巻く環境の変化に対応し、スーツケースは進化し続けて参りました。2010年には国内線機内持ち込みサイズの厳格化に伴い、規定サイズ内で40Lという最大級の容量を確保した「マックスパス」を発売しました。 新型コロナウイルスによる旅行自粛が続いた2020年から2022年にかけて旅行需要は低迷しましたが、2023年には世界的なリベンジトラベルブームや円安を背景にインバウンドが増加し、「たくさんのお土産を詰めて自国に帰りたい」というニーズから大型スーツケースの売れ行きが伸びていますね。