「もっと引き上げを」 部活の地域移行、謝礼試算「時給1100円」に声上げる教員 保護者負担増える可能性も、背景に最低賃金並みの手当で支えている現実が…
中学校の部活動を民間や地域に委ねる「地域移行」をした場合、保護者の経済的負担が大幅に増える―。長野県の須坂市教育委員会は、指導者に支払う謝礼などの支出総額を保護者負担として計算すると、生徒1人当たりの負担は月額1500円~4千円以上となると試算した。 【グラフ】部活動の地域移行、開始時期は
時給1100円と想定すると…
市教委によると、市内全4中学校に計40部活がある。1日当たりの活動時間は原則として平日2時間、休日3時間で、毎週平日に1日、さらに土日曜のどちらかを休養日に当てている。試算では全部活を地域移行して指導者50人を確保し、時給(謝礼)を1100円と想定。地域クラブの運営経費を保護者から集めた部活動費で賄うとし、生徒1人当たりの負担を概算した。
指導者への謝礼、保護者の負担は生徒1人当たり月1500~4000円以上
指導者への年間支出は、休日のみ移行した場合は計792万円、平日も含めると計2904万円。さらに市教委事務局の人件費や保険代も加えると総支出はそれぞれ1217万9700円、3329万9700円となる。休日のみ移行の場合は生徒1人当たり月1500円以上、平日も含めると月4千円以上を保護者が負担しなければならない。
「時給1100円」はアルバイト程度
今の保護者負担が少ないのは、教員たちが不十分な手当で支えてきたからだ。試算で想定した指導者の「時給1100円」もアルバイトの時給程度で、当事者からは「もっと引き上げを」と声が上がる。県教委や文部科学省も公的支援の充実が必要と認めるものの、本格的な検討はこれからだ。
教員の「犠牲的な働き」で支える現状
市教委の試算は昨年8月下旬、市内で開かれた部活の地域移行を検討する協議会で示された。試験的に地域移行を進めている陸上競技の地域クラブの指導者も出席。「本業の傍ら指導に当たっている人もおり、試算以上の給与を求めたい」との声が上がった。一方、教員からは「これまで試算より安い手当で指導を担ってきた」と指摘があった。
現状の手当、休日は「時給900円」
県教委によると、休日の部活動指導に伴う教員の手当は3時間以上で1日2700円、特定の大会の引率を伴う場合は同5100円、宿泊を伴う遠征は1泊当たり3600円。須坂市は休日の部活動は原則3時間で、時給換算では最低賃金並みの900円だ。市教委の清水秀一コーディネーターは「これまで教員たちによる犠牲的な働きにいかに甘んじていたかを痛感した」とする。