「もっと引き上げを」 部活の地域移行、謝礼試算「時給1100円」に声上げる教員 保護者負担増える可能性も、背景に最低賃金並みの手当で支えている現実が…
保護者負担、自治体間で差
保護者負担は自治体によっても差が生まれつつある。長野市は市内全小中学生にスポーツや文化芸術の機会を提供するプロジェクトで、1人当たり年3万円分の電子ポイントを付与。地域移行した部活の参加費用にも充てられる。松本市は本年度、所得が一定基準を下回る世帯の就学援助対象者に年2万4千円を上限とする補助金を創設した。
県教委「家庭への支援、国に要望する」
家庭の経済状況に関係なく参加できる部活動は維持できるのか。県教委保健厚生課は「民間クラブごとに指導料が異なり、従来の手当では不十分な可能性がある。部活動が経済的に余裕のある人だけのものにならないよう支援を検討するとともに財源の確保を国に要望する」とする。
スポーツ庁「家庭の経済状況で諦めることがないよう取り組む」
2023~25年度を部活動の「改革推進期間」と位置付けるスポーツ庁も今は、各地域で進めている参加費用の軽減策を後押しする立場にとどまる。昨年8月に設置したワーキンググループで今後の地域移行の在り方を議論しており、保護者の経済的負担の軽減も焦点の一つ。来春ごろ方針をまとめる予定で、同庁地域スポーツ課は「経済的な事情でスポーツや文化芸術に触れる機会を諦めることがないよう国としても取り組む」としている。
生徒の活動の権利、保障を 〈神谷拓・関西大教授(スポーツ教育学)〉
学校の部活動は各家庭の経済的な格差に関係なく、多くの子どもたちにスポーツや文化芸術活動に取り組む機会を提供してきた。こうした強みが地域移行で損なわれることが懸念される。
保護者の経済的な負担の解消は不可欠で、その役割は特に地域移行を主導する国に求められる。だが、2023年度に地域移行のために確保した予算は約28億円。全国で移行を進めるには不十分だ。
国が批准する国連の「子どもの権利条約」は、子どもが文化芸術活動に自由に参加する権利を認め、活動の機会の提供を推奨している。その権利を保障するために誰が何をすべきで、どれだけのコストが必要か―という議論から始めなければならない。部活動を学校か地域かどちらかに押しつけるのではなく、協力して権利を保障していく枠組みの構築が求められる。