相川七瀬「大学に入って新曲の量産態勢に」夢見る少女は歌手として研究者として海外を目指す
歌手の相川七瀬(49)がデビュー30周年イヤーに突入した。現在は歌手としてのほか、大学院生として勉学に励む一面も持つ。40代後半で経験した大学生活は、自身の考え方にさまざまな変化をもたらしたと言い、「見ていた世界が広がった」と振り返る。その大学生活や、今後の夢について赤裸々に語った。(松下 大樹) キリッとした表情とスラッとしたスタイルは、かっこいいという表現がピッタリと当てはまる。醸すオーラにその場の空気が緊張感で張り詰めそうになったが、あいさつと同時に見せた相川の柔らかい笑みは、ホッとするような温かみを感じさせた。 11月8日に迎えたデビュー30周年イヤーの幕開け。第一声で「正直、30年歌ってる未来を描いてなかったなって思います」と率直な心境を漏らした。「長く続けられたことはすごく幸運だなと」。目線を下に向け、喜びをかみ締めるように小さくうなずいた。 ここまで活躍できた理由について「楽曲に恵まれたアーティストだと思う」と自己分析。自身に楽曲を提供してきた織田哲郎(66)や布袋寅泰(62)らの顔を思い浮かべながら「30周年を振り返るライブをやるぞってなった時にセットリストから外せない曲が多い。支えてくれた方のミュージックワークに尽きると思います」と感謝の気持ちを込めた。 これまで、歌手活動と並行しながら作家やセラピストなどさまざまなジャンルの仕事にも挑戦してきた。いろいろなことに取り組む姿が印象深い中、2020年には国学院大神道文化学部へ入学。今年3月に卒業すると、そのまま同大学院に進学し、今は祭りの研究に励んでいる。 3月までの学部生活について「自分の長男と同じ年の学生さんたちとずっと一緒にいた。本当に楽しかったですし、見ていた世界が広がった」と声を弾ませながら振り返る。「大人になると、人間関係が固定されがちじゃないですか。大学に入って良かったなと思うのは、全然違うジェネレーションの人と出会うことで、自分が見てこなかった世界を彼らが見せてくれた」。刺激の日々を頭の中で巡らせた。 大学生活は新しい発見の連続。「大学生って自由で遊べるイメージを持っていたんですけど、全く遊べない。バイトなんかしてたら絶対、時間はないでしょうね」。言葉に熱を帯びながら続けた。「遊んで勉強してない時もあるだろうけど、やる時はやるという友達の姿を見ると、今の子たちは見えないところですごく頑張ってるのではないかと思うようになった」。若者への尊敬の念が、言葉の端々に込められた。 一人の母親として、息子に対する見方にも変化があった。入学前までは頼りなさを感じることも多かったというが「意外とうちの息子も私の知らないところで頑張っていたのかもしれないなと。肯定的に見られるようになった」としみじみ。「前までは勉強している時に携帯を触っていたら怒っていましたけど、今は自分も集中力が続かない時にネットとか見てしまうし『ゲームをしたくなる気持ちも分かるな』って」。同じ目線に立てたことは親としてこれ以上にない収穫だった。 本業にも良い影響をもたらしていた。「時間があっても1ミリも曲が浮かばなかったのに、忙しくリポートとか書いて頭が回転させられていると、歌詞がふとひらめくようになった」。大学入学前より曲の制作ペースが上がっていると言い「授業の中で聞いた話が基になって詞を書くこともあるし、精力的に音楽をやろうという気持ちにさせてくれる。大学に入って新曲の量産態勢になっています」と相乗効果を実感している。 6日には、その学生生活の合間を縫って制作したミニアルバム「SPARKLE」をリリース。国学院大の陸上部に向けた「襷(たすき)をつなげ」や、熱烈なファンである横浜DeNAベイスターズに向けた「Blue Star」など、応援ソングを中心に6曲が収録されている。 偶然にも、3日には国学院大が全日本大学駅伝で優勝、DeNAも日本一に輝く“ダブル優勝”を経験。曲をささげた2チームの快挙に「本当に夢にも思ってなかったです」と思わず頬を緩めた。 芸能生活の節目とともに、来年2月には50代へ突入する。今後について「海外でもライブをやりたいと思っています」と世界ツアーを目標に掲げつつ「音楽をやるだけじゃなくて、研究者として海外の民俗も見たい。いろんな可能性があると思うので、海外に目を向けて展開したい」と明かした。特に、ブラジルに大きな興味があるといい「日系社会の祭りの組織を見てみたい」と意欲をのぞかせた。 さらなるキャリアアップに向けて「ここからの10年はすごく大事」と位置づける。子育ても終わりに近づき、自分のために使えるようになった時間に胸を膨らませていた。「結婚した後はゆっくり走ってきた。年齢的にも一番最後のアクセルを踏むところかなと思っていて、目標を高く持って、しっかりドライブしてみたいなと」。そう話す目の輝きはまるで「夢見る少女」のままだった。 ◆相川 七瀬(あいかわ・ななせ)1975年2月16日、大阪市出身。49歳。95年、「夢見る少女じゃいられない」でデビュー。96年、シングル曲「恋心」やアルバム「Red」が大ヒット。2001年、一般男性と結婚。3人の子供を持つ。20年、国学院大に入学。24年、国学院大大学院に進学。
報知新聞社