バレンタイン氏案も浮上する「駐日米大使」の役割とは?
年明け1月に正式に誕生するトランプ米大統領。新政権の主要な顔ぶれが固まりつつある中、駐日大使にプロ野球元ロッテ監督のバレンタイン氏も取沙汰されるなど、注目が集まっています。米大使といえば、20日に最終回が放送された人気ドラマのエンディングテーマに合わせたダンス映像も話題になりました。しかし、駐日米大使の役割や重要性については、日本人になじみの深い役職の割にあまり知られていないかもしれません。元外交官の美根慶樹氏に寄稿してもらいました。 【写真】「トランプ政治」の方向性は? 固まりつつある政権顔ぶれ
◇ 「トランプ政権」の駐日大使に元ロッテ監督のボビー・バレンタイン氏が任命される案が出ているようです。野球一筋に生きてきたバレンタイン氏は外交や行政とまったく無縁の人ですが、よい大使になるかもしれません。 現在の米国大使はキャロライン・ケネディ氏で、故ジョン・F・ケネディ大統領の長女として日本でもよく知られていましたが、大使としても日本人に親しまれています。これは大使として成功する一つの重要な条件です。 大使とは何か、一言で大使と言っても、役割や位置づけはさまざまであり、必ずしも理解されているとは限りません。一般的に言って、大使には次のような特徴があります。
特徴がないのが特徴?
第1に、大使はどの業界の代弁者でもなく、強いて言えば母国の代弁者です。つまり、特徴がないのが大使の特徴です。大使が特定の企業の代弁者となるべきでないことはだれにも明らかでしょう。業界についても基本的には同じことであり、特定の業界の利益を代弁すると、それと競合関係にある業界の利益を損なう恐れがあるからです。 もっとも、状況次第で特定の企業に関して行動することはあります。私はかつてユーゴスラビア、現在のセルビア、モンテネグロ及びコソボの大使でした。その時、同国首相の要請を受け、ある日本の自動車会社に対してユーゴスラビアへ進出してほしいと頼んだことがありました。しかし、それは競争や競合関係がまったくない状況だったので可能であり、また、そうすることが日本とユーゴスラビアとの関係増進に役立つと判断したからでした。