【袴田さん再審】判決目前に58年経過した事件現場は今…そして弁護団の心境は?津川アンカーが取材(静岡)
Daiichi-TV(静岡第一テレビ)
先週、静岡市清水区。58年前の事件現場を津川アンカーが訪れました。 (津川 祥吾 アンカー) 「こちらですかね、ちょっと樹が覆い茂っていて見にくいですが、少し壁が黒くなっていることがわかりますね」 現場には、当時焼けた蔵がそのまま残っています。58年前、この場所で、みそ製造会社の専務一家4人が殺害され、その自宅に火が放たれました。放火・強盗殺人などの疑いで逮捕されたのは、みそ製造会社の住み込み従業員だった袴田巌さん当時30歳。無実を訴え続けた袴田さんは、2024年、88歳となりました。2023年10月から再審=やり直し裁判が始まり9月26日、判決が言い渡されます。 (津川 祥吾 アンカー) 「これで袴田事件としては裁判が終わるのかもしれませんが、一方で58年前に亡くなった4人の方々が、今、どんなつらい思いで亡くなられたか、そのことも忘れてはいけないなというのを強く感じます」 当時を知る付近の住民は事件をどう受け止めているのか。話しを聞くことができました。 (津川 祥吾 アンカー) 「今はもう、はっきりしてもらいたいという感じですかね」 (近隣住民) 「そうだね、はっきりしてもらいたい」「亡くなった人が…」 (津川 祥吾 アンカー) 「浮かばれないですよね」 (近隣住民) 「浮かばれない」 この事件で、袴田さんを犯人とする決定的な証拠となったものがあります。犯行着衣とされている血痕が付着した5点の衣類です。事件から1年2か月後、みそタンクの中から発見されました。近隣住民は、従業員でなければ衣類をみそタンクに隠すのは難しいのではないかと話します。 (津川 祥吾 アンカー) 「地域の皆さんとしては事件についてどう思っているか」 (近隣住民) 「犯人がね、みそ樽にわざわざ、鍵かけて厳重にしてあるところに(衣類を)入れるわけがない、逃げるよね」 (津川 祥吾 アンカー) 「そうですよね」 (近隣住民) 「あそこに入れるのは、従業員じゃないと…」 (津川 祥吾 アンカー) 「皆さん思っている感じですかね」 判決が近づく中、再審公判について弁護団の小川秀世弁護士に話しを聞くことができました。 (津川 祥吾 アンカー) 「まず、判決が出る前の今の心境は?」 (弁護団 小川 秀世 弁護士) 「判決が終わってほしいですね」「ずーっとこう宙ぶらりんな形でいるので」 (津川 祥吾 アンカー) 「確信たるものはあるのか?」 (弁護団 小川 秀世 弁護士) 「それはもう、いい結論、無罪が出るということは確信を持っている」 2023年10月から15回にわたり開かれた再審公判で、弁護側は捜査機関による複数の証拠のねつ造を指摘。「5点の衣類」も、ねつ造されたものだと主張してきました。 (津川 祥吾 アンカー) 「ねつ造問題についてはどうとらえているのか?」 (弁護団 小川 秀世 弁護士) 「1つは捏造に関しては5点の衣類というところが中心の証拠だったが、その中心の証拠がねつ造された。それが捜査機関の手によるのではないかと、再審請求審の裁判所は静岡地裁も東京高裁もそういう認定だった。そういう意味ではこれは信じがたいほど重大な問題だと思っている」 その、ねつ造の主張を強固にしたのが検察側の証拠開示だったといいます。2010年、弁護団が第2次再審請求を進める中、検察側が弁護側の証拠開示請求に初めて応じ、約600点の証拠を開示。その中に含まれていた5点の衣類の鮮明なカラー写真が大きなきっかけとなり、2014年、静岡地裁は再審を認め袴田さんを釈放。さらに2023年、東京高裁は「5点の衣類」について、事件から相当な期間が経ってから第三者がみそタンクに隠した可能性が否定できない。つまりねつ造された可能性があると再審開始を認めたのです。実に事件から57年目での決定でした。 (津川 祥吾 アンカー) 「再審制度というところに絞った場合、制度の現時点の問題点は」 (弁護団 小川 秀世 弁護士) 「それはもう言われている通り、一番大きなのは証拠開示の問題」「だって、我々が2010年に証拠開示を受けたときに、びっくりしたのが、袴田さんに有利な証拠ばっかりじゃないかという、こういう物を(裁判官が)見ていたら、とても有罪判決なんてかけるわけがないと思った。それが隠されていたということが由々しき問題」 小川弁護士は、再審制度において、捜査機関の証拠開示の規定がないことが審理の長期化の要因だと話します。 (弁護団 小川 秀世 弁護士) 「捜査機関が強制力を持っているので、強制的な力も含めて関係ある証拠はみんな持っていくし、みんな調べていく、それが検察の方にまわって、検察はその中で有罪に持っていくために必要な証拠だけを出す。だから、逆を言えば無罪になるような、無罪を思わせる証拠は出さなくていいというのが日本の司法制度」 再審公判で、検察側は袴田さんに再び死刑を求刑し、5点の衣類を除いても袴田さんが犯人であることは認められると主張。さらに、ねつ造については、合理的な根拠のない非現実的で実行不可能な空論だと主張しています。 (津川 祥吾 アンカー) 「この事件、判決がようやく出るということになると思うが、袴田さんご自身に対して思うことは」 (弁護団 小川 秀世 弁護士) 「袴田さんは本当に無実であるのに(拘束されてしまった)、死刑が確定してから、精神的に非常につらい思いをして、今は通常の精神状態ではない、今の状態が元に戻ることができない悲惨な状況だと思っている、それがこの事件の最大の問題ですよね」 今回の判決は、今後の再審制度の在り方を問うものとなりそうです。