エネルギー関連のCO2排出量は「今年がピーク」、減少に転じてもまだ喜ぶべきではない
エネルギー関連の二酸化炭素(CO2)排出量は2024年がピークとなりそうだ。産業革命以降、続いてきた増加傾向から減少に転じようとしている。2008年の金融危機や新型コロナのパンデミックの時には旅行や経済活動の突然の減少でCO2排出量が一時的に減った。今回はそうした短期的なものではない。ざっくり言うと、産業革命以降、排出量は増加し続けてきたが、現在は逆転が始まっている。 近代史上、これは歴史的な瞬間だ。 パリ協定を鑑みると、状況は厳しさを増している。エネルギー関連の排出量は今世紀半ばまでにおおよそ半減するが、これは求められているネットゼロにはほど遠い。第三者認証機関のノルウェー船級協会(DNV)の「エネルギー・トランジション・アウトルック」によると、今世紀末までに地球の気温は2.2度上昇することが予想され、人類に壊滅的な影響を与えるだけでなく、気候変動は生物多様性の喪失の主たる原因となる可能性が高い。 エネルギー関連の排出量が最も多くなった原因の究明は、なぜこのような事態になったのか、どうすればもっと早く脱炭素化を進められるのかを理解するのに役立つ。 新たなエネルギーシステムへの移行で最もインパクトのある技術は、太陽光発電とバッテリーだ。太陽光発電の導入は昨年80%増加し、予測を上回るスピードで進んだ。このスピードのすさまじさを発電量に例えて説明すると、2004年にはわずか1GW(ギガワット)だったのが、2019年には100GWに増加し、2023年には400GWにもなった。その上、バッテリーのコストは昨年14%下がり、これにより24時間太陽光発電を稼働させる費用と電気自動車(EV)の価格がより手頃なものになった。 こうして世界のほとんどの地域で、太陽光発電は石炭を使うより安価な発電形態となり、一方、EVの普及により石油消費の増大が抑えられた。こうした説明をドイツ・フランクフルトのディーゼルで走るタクシーの後部座席で読んだり、米テキサス州の油井で動くピストンポンプを見たりしていると、信じがたい話に思えるかもしれないが、この変化が特に顕著なのは中国だ。中国は昨年、世界で新たに設置された太陽光発電設備の58%、EV新規購入の63%を占めた。中国は世界最大のCO2排出国であるため、中国におけるグリーンテックの浸透は世界のエネルギー転換に特に重大な影響を及ぼす。