福岡市の百貨店「岩田屋本店」「大丸福岡天神店」が描く戦略は…狙いは次世代の富裕層と訪日客
百貨店のビジネスモデルが転換期を迎えている。主力の衣料品はカジュアル専門店などとの競争で逆風にさらされる一方、高級ブランドや宝飾品の販売が好調だ。ただ、富裕層は高齢化が進んでおり、各社は若年層の取り込みに力を注ぐ。都市部では訪日客による消費が盛り上がるが地方には恩恵が届かず、生き残りをかけた立て直しが急務となっている。 【地図】天神地区の百貨店と今後開業する主な商業施設
ブランド化粧品で若者と接点
大小様々な商業ビルが立ち並ぶ九州最大の繁華街、福岡市・天神。10月中旬の3連休の最終日、中心部にある老舗百貨店「岩田屋本店」の本館1階は、20~30歳代の女性客でにぎわっていた。
目当てはシャネルなど、約50のブランドが入る九州で最大規模の化粧品売り場だ。10万円以上する高級ブランドのバッグや衣料品は簡単に買えなくても、1万円前後から並ぶ化粧品なら手が届く。若者には憧れのブランドの「入門編」として人気を集める。
運営会社の岩田屋三越は若者を呼び込み、「次世代の富裕層」との接点を増やそうと6年ほど前から売り場を拡充してきた。8日には「プラダ・ビューティ・ストア」がオープンする。原一征・営業本部長(58)は「百貨店でしか手に入らない化粧品ブランドもあり、強みになっている」と手応えを語る。
外商で高級外車・人間ドック紹介
主力の衣料品はカジュアル専門店の台頭で好みの二極化が進み、百貨店はブランド品などを好む富裕層に重点を置く。長い歴史を持つ岩田屋は元々、訪問販売を主体とする「外商」の裕福な顧客を多く抱え、本店の2023年度の総額売上高は800億円超と九州トップだ。ただ、高齢化が進む中、新たな開拓も急ぐ。
コロナ禍で抑えられていた消費の回復や株高を受け、岩田屋三越の左中樹太郎社長は「若い富裕層も増えている」と話す。外商では高級外車や不動産、人間ドックの紹介にまで手を広げ、こうした顧客の常連化を目指す。仕事を引退した高齢の富裕層には旅行も提案するなど、充実した品ぞろえで他県の顧客も増えているという。