福岡市の百貨店「岩田屋本店」「大丸福岡天神店」が描く戦略は…狙いは次世代の富裕層と訪日客
岩田屋三越は天神で本店と福岡三越の2百貨店を運営する。福岡三越は衣料品が中心の中層階の集客が課題だが、数百万円以上の陶磁器の展示販売や高級時計の充実などで富裕層を集める。訪日客の回復もあり、両店を含む岩田屋三越の23年度の総額売上高は1245億円と過去最高だった。
ラウンジにギャラリー「乾坤一擲の改装」
ライバルの「大丸福岡天神店」も力を入れるのは富裕層戦略だ。10月に外商の顧客しか入ることができない館内のラウンジを刷新したのに続き、来年度は現代アートを集めた九州最大級のギャラリーも開設して若年富裕層の取り込みを目指す。一連の投資額は10億円規模とみられ、幹部は「乾坤一擲の改装だ」と語る。
背景にあるのは大きな危機感だ。1953年に福岡市博多区で開業し、75年に天神に移転した大丸は長年、中間層の女性客を中心に衣料品や食品で支持を集めてきた。しかし、顧客の高齢化が進み、コロナ禍で来店を控えるようになった年配客が戻らない。2021年度には天神店の総額売上高(412億円)が博多阪急(414億円)に抜かれた。
そこで力を注ぐのが「富裕層に支持される百貨店」への転換だ。訪日客の集客も強化し、昨年度は中国の大型連休に合わせて福岡空港の国際線ターミナルから無料バスを運行した。免税品の売り上げが伸び、昨年度の決算は最終利益が4期ぶりに黒字化した。
商業施設続々、顧客奪い合いは激化
福岡市内では今後、一層激しい競争が見込まれる。博多駅一帯に商業集積が進むほか、天神地区でもライバルとなる大型施設の完成が相次ぐ。来年4月に開業する西日本鉄道の大型複合ビル「ワン・フクオカ・ビルディング」の商業フロアには、シャネルが直営店を出店する。
商業施設だったイムズの跡地で27年に開業予定の複合ビルにも商業フロアが設けられる見通しだ。「再び天神の街の魅力と集客力が高まる」(福岡市の百貨店関係者)と歓迎する声が多いが、顧客の奪い合いは激化しそうだ。(佐藤陽)
◆岩田屋三越=岩田屋は1936年、福岡三越は97年にそれぞれ福岡市・天神で開業。岩田屋が経営不振で伊勢丹傘下に入った後、伊勢丹と三越が経営統合して三越伊勢丹ホールディングス(東京)が発足し、岩田屋と福岡三越も2010年に合併した。