〈エネルギー運搬船受注で日中韓の仁義なき戦い〉中東市場で韓国・中国に押されるも、“逆転の一手”となる日本の技術とは?
中東諸国は現在、天然ガス産業の発展に注力している。カタールは液化天然ガス(LNG)の大規模な増産計画を進め、またアラブ首長国連邦(UAE)やオマーンも新規事業に着手した。それと同時に、LNG輸出に不可欠なLNG運搬船を調達する動きも活発化している。 【図表】カタールやUAEの新造LNG運搬船は韓国と中国がほぼ独占する 世界の造船業界を牽引するのは、日本、韓国、中国である。3カ国が世界の新造船竣工量に占めるシェアの合計は90%以上。中東諸国が求めるエネルギー運搬船の受注をめぐる競争が激化しつつある。
中東で拡大するLNGプロジェクト
近年、中東諸国はLNG輸出の拡大を目指している。まず、カタールは2017年より、同国沖合の「ノースフィールド(NF)・ガス田(別名ノースドーム・ガス田)」拡張プロジェクトに取り組んできた。 カタールのLNG年産能力は第1段階の「NFイースト」事業で現在の7700万トンから26年頃に1億1000万トンに、第2段階の「NFサウス」事業で28年頃に1億2600万トンに増加する。さらに、24年2月に発表された第3段階の「NFウエスト」事業では、30年までに1億4200万トン(現在比プラス84%)に増える計画である。 次に、UAEでは24年6月、アブダビ首長国でのルワイスLNG事業の最終投資決定(FID)が承認された。同事業では、960万トンの年産能力を擁するLNG生産施設がルワイス工業都市に28年までに新設される。完成すれば、UAEのLNG年産能力は、現在比の2倍以上の、最大1560万トンに増加する見通しだ。 そしてオマーンもLNG増産計画を始動させた。24年7月、南シャルキーヤ県カルハートで、年間380万トンのLNG生産能力を持つ液化設備が29年までに追加配置される。 これにより、オマーンのLNG年産能力は1520万トンまで引き上げられる予定だ。オマーンのカルハートは、ホルムズ海峡のインド洋側に位置する地理的優位性を持つため、中東情勢の緊迫化に伴ってホルムズ海峡が封鎖された場合でも、同海峡を迂回したLNG輸出が可能となる利点がある。 さらに、LNG事業を行っていないサウジアラビアも自国での将来的な事業化を見据え、24年6月に米国テキサス州のLNGプロジェクトへの参入を表明した。米国のLNG事業に関わることのメリットは、LNG生産施設の低炭素化に向けた最先端の取り組みを把握できることや、米国産LNGのトレーディングを通じて新たな収益源を確保できることである。