日本の平和を維持してきた『抑止力』 一翼を担う在日米軍の全体像とは?
専用施設は全国各地
在日米軍の施設は全国各地にあります(図表2参照)。防衛省などの公開情報によれば、2015年3月現在、在日米軍は14都道府県に合計82箇所の専用施設を持っています。在日米軍の専用施設の面積を全て合わせると東京23区の半分程度の広さになります。専用施設の一例は、在日米軍の施設で最も新しい、京都府京丹後市の「経ヶ岬(きょうがみさき)通信所」です。経ヶ岬通信所は米陸軍の施設で、弾道ミサイル防衛用のレーダーが設置されています。 一方、専用施設とはいえ、自衛隊が共同で使用している場所もあります。その一例が本州最大の在日米軍基地である、青森県三沢市の「三沢(みさわ)基地」です。三沢基地は飛行場で、米空軍の戦闘機や米海軍の偵察機などが所在している他、航空自衛隊も拠点を置いています。ちなみに82箇所ある専用施設には、神奈川県逗子市などにある「池子住宅地区」など、非軍事的な施設も含まれています。
防衛予算の1割は在日米軍関係経費
日本政府は米軍が日本に駐留する上で生じる経費の一部を支出しています。財務省などの公開資料によれば、平成27年度に日本政府が予定している在日米軍関係経費の総額は7,250億円になります。この総額には、米軍の施設がある地方自治体に交付される「調整交付金」など、防衛省以外の省庁が所管する経費も含まれています。防衛省が所管する経費は約5,200億円となっています。経費として計上されているものには、在日米軍施設で働く日本人労働者の給与や庁舎等を造るための施設整備費、騒音軽減や土地返還のための事業費など、様々な経費が含まれています。実は、いわゆる「防衛予算」と呼ばれる防衛関係費には、これらの経費が含まれています。平成27年度の防衛予算の総額は約5兆円ですから、防衛予算の1割は在日米軍関係経費ということになります。 日本には約5万人の米軍が、約80箇所ある全国各地の専用施設などを利用して駐留しており、日本も防衛予算の1割を在日米軍関係経費として支出しています。在日米軍が駐留していることで、騒音や周辺住民との摩擦など、いわゆる基地問題が生じていることは間違いありません。一方、在日米軍が駐留することで、人員や軍艦、戦闘機など、自衛隊の2割に相当する防衛力が日本に存在しているのも事実です。日本の安全保障について考える際には、抑止力の一部として機能している在日米軍にも目を向けたいものです。 (廣瀬泰輔/国会議員秘書) ---------- 廣瀬泰輔(ひろせ・たいすけ)。元米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員。防衛大学校卒。松下政経塾卒。米海軍研究所に留学(2008~2009年)。主な執筆記事に、「『戦争』だけが自衛隊の仕事じゃない 非軍事活動ムートワ(MOOTW)とは?」