【社説】汚染水放出1年、「怪談」主張する大統領室は日本の代弁者か
日本の福島第一原発からの放射能汚染水の海洋放出から丸1年を翌日に控えた23日、大統領室は「何の科学的根拠もない荒唐無稽な怪談が偽りの扇動であることが明らかになっているにもかかわらず、怪談の根源地である野党は国民に対して謝罪すらしない」と野党を非難した。膨大な量の放射能汚染水を隣国の国民の懸念を無視して海に流している肝心の日本については、一言もなかった。一体どこの国の大統領室なのか。 福島第一原発の汚染水は放出直前までに134万トンがたまっており、さらに毎日100トンあまりが生成されている。日本はこのうち5万4600トンをこの1年間に放出した。今後も毎年数万トンが、少なくとも30年以上にわたって放出される。汚染水にはセシウム137などの人体に致命的な影響を及ぼす放射性物質が微量ではあるが含まれており、トリチウム(三重水素)はいわゆる多核種除去設備(ALPS)でもろ過されないため海水で希釈して放出される。このような大量で長期にわたる汚染水の放出は人類が一度も経験したことのないものであり、長期的に生態系と人間の健康にどのような影響を及ぼすかは誰も予断できない。たった1年たっただけで「ほら、何事もないじゃないか」とでも言わんばかりだ。これが国民の安全を最優先に考えるべき大統領の言うことなのか。 日本は自国内で汚染水を保管・処理できる様々な方策があったにもかかわらず、金も手もかかるというだけの理由で海への大量投棄をはじめた。正常な政府なら、当然にも自国が引き受けるべき危険を外部に押し付けた日本の態度に断固反対すべきだった。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は逆に「汚染水のせいで韓国の海が汚染されるという根拠のない扇動」などと言い、先頭に立って日本を擁護してきた。今も日本の責任には言及すらせず、むしろ懸念を示す国民を追い詰めている。日本政府にとって尹大統領はどれほどありがたいことか。 大統領室は「この1年間、国内海域、公海などで試料を採取し、4万9600件あまりの検査をおこなった結果、安全基準を外れた例はただの1件もない」とし、「使わなくて済んだはずの予算1兆6000億ウォンが投入された」と述べた。しかし、汚染水が太平洋を回って韓国の海域に流入するまでには4~10年かかる、というのが政府のシミュレーションの結果だった。このように性急に判断を下すべきではない。莫大な予算を使うことになったのは懸念している国民のせいなのか、日本の放出のせいなのか。なぜ日本には何も言えず、国民のせいにばかりするのか。 「日本の環境省の資料によると、放出地点近くの魚類のトリチウム濃度は放出2カ月後に10倍になっている」(ペク・トミョン元ソウル大学保健大学院長)と指摘されてもいる。日本政府は今年2月以降、放射能に関する資料も提供していない。尹錫悦政権には、せめて一度は日本ではなく国民を代弁してもらいたい。 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )