箱根駅伝の「伏兵ランナー列伝」 マネージャー兼任の選手が好走、まさかの抜擢が奏功した例も
往路で13位と出遅れた法大は、2年連続シードをかけ、復路で挽回を狙ったが、6区で過去2年間、区間3位、5位と好走した山下りのスペシャリスト・白田雄久がアキレス腱を痛め、リザーブの選手も故障したことから、山下り要員がいなくなってしまった。 成田道彦監督は悩んだ末、7区、または8区のリザーブ要員だった2年生の松垣に白羽の矢を立てた。「1500メートルを走れるスピードがあり、足も太くてしっかりしている。ひょっとしたら、山下りに向いているのでは?」という理由からだった。60分台が計算できる白田には及ばないまでも、「松垣が62分台でつないでくれれば(まだ逆転シードの)望みがある」と淡い期待を寄せた。 「エントリーメンバーに入れたのも奇跡だったのに、出場できるなんて信じられない」とまさかの大抜擢に目を丸くした松垣は、ぶっつけ本番の6区を「とにかく走り切ってタスキをつなぐことだけを考えて」と積極的に攻めの走りを見せる。 この無欲の走りが功を奏し、3年連続区間賞を達成した野村俊輔(中大)にわずか5秒差の60分6秒の区間2位と大健闘。松垣の激走で順位を3つ上げ、勢いに乗った法大は、最終的に総合8位で36年ぶりの連続シードを獲得した。 苦肉の策が結果オーライになった成田監督も「まさに代打ホームラン。ここまでやってくれるとは……」と大喜び。松垣は翌年の6区でも59分09秒で区間2位をマークし、チームの初の復路優勝と3年連続シードに大きく貢献した。 各校のエースがしのぎを削る“花の2区”で、居並ぶ強敵を制して区間賞に輝き、「伏兵」の見出しで報じられたのが、第93回大会(2017年)の神奈川大・鈴木健吾だ。 前年も2区を走り、区間14位に終わった鈴木は「このままじゃダメだ」と痛感。4月から3年生で主将となると、「一番速く走れ」「背中でチームを引っ張れ」を二大目標に朝、昼、夕と走りつづけ、10月の箱根予選会でも日本人トップの3位を記録するなど急成長。2年連続の2区に挑んだ。