【9月は認知症月間】2025年、東京の認知症高齢者は54万人へ 都医師会「“シン後期高齢者” の声で医療介護は変わる」【前編】
東京都における認知症高齢者の状況を教えてください。 平川「東京都の高齢者(65歳以上)人口は2020(令和2)年の319万人に対して2030(令和12)年は334万人と15万人の増加、80歳以上人口は2020年の105万人から2030年には132万人と27万人増加する見込みです。高齢化率も2035(令和17)年には25.0%、2050(令和32)年には29.4%と都民のおおむね3人に1人が高齢者となり、その準備をどうしていくのかということが今の課題です。 高齢化の進行で世帯主の年齢が65歳以上の高齢世帯が増加し続け、65歳以上の単独高齢世帯数は2065(令和47)年に全世帯数の約17%を占めるとの予測があります。認知症高齢者の推計は2022(令和4)年に約49万人ですが、2025(令和7)年に約54万人、2040(令和22)年には約57万人に増加するとされています。2022年の調査では何らかの認知症の症状がある高齢者の63.1%、見守りや支援が必要なより重度の認知症高齢者の55.7%が在宅で生活していることが分かりました。 認知症高齢者の日常生活自立度判断基準に基づき認知症高齢者の居住場所を調べると、ランクM(著しい精神症状や行動障害、あるいは重篤な身体疾患のため専門医療等を必要とする)の方は病院や施設などの自宅以外が多いのですが、中重度のⅢ、Ⅳの方のかなりの数が在宅で生活されています。在宅生活している認知症が疑われる方の世帯状況は1人暮らしが16%、夫婦のみが30%、子供夫婦と同居が22%、配偶者のいない子との同居が29%でした。 認知症を診療している者の肌感覚としては、気丈夫に1人暮らししている方の進行は比較的ゆるやかで、ご家族と同居していても、家庭内で孤立している方の進行は早いような印象を持っています」
認知症高齢者が増加することによって起こりうる課題は? 平川「認知症高齢者に同居家族がいても、家庭介護を担当するご家族の身に何かがあると日常の風景はがらりと変わります。その穴を施設入所や訪問系サービスで補うのですが、訪問介護は人材不足と高齢化で存続が危うい状況です。この度のコロナ禍で感染の恐怖に怯えながらも献身的に各家庭を訪問し続けたホームヘルパーが疲弊し、介護現場を去っていく者が続出しました。人材不足で、訪問介護事業所の閉鎖が続いています。 それにもかかわらず、今年度の介護報酬改定では訪問介護の基本報酬が引き下げられました。熟慮のうえでの判断でしょうが、今でなくてもと残念に思います。医師が外来で要介護・認知症高齢者を診察する時間を仮に10分程度だとすると、残りの23時間50分は在宅生活を支える地域の介護力が担っています。ホームヘルパーがいなければ在宅生活の維持も通院もできません。きわめて重要な地域の資源・財産である介護職なのですが、残念ながら社会的評価が十分だとは言えません」 後編では東京都における認知症高齢者への取り組み、さらにアルツハイマー病の新たな治療薬についても聞いていく。
TOKYO HEADLINE・後藤花絵