米401kにみる「TDF」や「マネージドアカウント」の活用、新NISAの積立投資との大きな違い
このため、401kプランを従業員に提供する企業では、「マネージドアカウントを単なる資産運用サービスとして紹介するのでなく、ウェルビーイングを向上させる福利厚生制度として位置づけ、従業員に積極的に活用を促す米国企業が増えている」という。「マネージドアカウント」を採用する401kプランの比率は年々高まり、2013年は10.2%だったものが、2017年に22.6%、2020年に32.3%となり、2024年には42.5%にまで高まっている。
企業型確定拠出年金は、給与の一定額を毎月拠出して投資信託等を使って長期に運用する制度だ。国内では新NISAのスタートによって広がっている「投資信託の積立投資」と同じような運用の仕組みになっている。新NISAの積立投資では、「全世界株式(オール・カントリー)」、または、「米国株式(S&P500)」といった株式インデックスに連動するインデックスファンドによる積立投資が一般的だが、米国の401kプランではTDFが一般的に活用され、TDFを個々人の状況に合わせてカスタマイズした「マネージドアカウント」の活用が広がっていることに注目したい。
米国401kは1978年に制度化され、45年以上の歴史がある。この間に、様々な市場変動を経験し、プランでの運用の在り方についても様々な試みがなされたと想像される。その結果、行きついたのがTDFだったのではないだろうか。TDFは、国内外の株式や債券などに幅広く分散投資し、運用期間が長くとれる若い時には、株式の投資比率を高くし、その後、徐々に株式への投資比率を低くして、定年退職が近づくと債券を中心としたポートフォリオになるように資産配分比率を段階的に変更する商品になっている。
日本の新NISAは2024年1月に始まったばかりであり、その前身の「つみたてNISA」の始まりも2018年1月であり、国内で積立投資が広がり始めて6年余りしか経過していない。45年もの歴史を重ねた401kの現状と比較して、単独の株価指数に投資対象を限定しているNISAでの積立手法に危うさが感じられないだろうか。
401kで重視される「ウェルビーイング」という考え方も重要だ。資産運用は、本人の生活が豊かになるために行うのであって、資産運用することにストレスを感じるようなことは極力避けた方が良い。8月のように株価(日経平均株価)が短期間に20%も下落するようなことは、そこに投資していればストレスでしかないだろう。浦田氏の米国401kプランに関するレポートは、長期の資産運用を考えるうえで重要な示唆を与えてくれるようだ。(グラフは、「ターゲット・デート・ファンド2060」と日米主要株価指数のパフォーマンス推移)
ウエルスアドバイザー