窮地のトランプ大統領? ロシア疑惑とその後の醜悪な世界
8月22日(日本時間)、トランプ米大統領の側近2人が「有罪」となったことで、アメリカ政治を揺るがしてきたロシア疑惑は大きな局面を迎えたようにみえる。しかし、各種世論調査ではいまのところ、共和党支持者からのトランプ大統領への強い支持は硬いままだ。もし、11月の中間選挙を捜査の一定のゴールとすると、疑惑解明を指揮するモラー特別検察官に残された時間は少ない。(上智大学教授・前嶋和弘) 【図】強くて実は脆いアメリカ大統領 「弾劾」に必要なプロセスとは?
2人の側近が「有罪」だが
2016年大統領選挙でトランプ陣営の選対本部長を一時務めたマナフォート氏と、トランプ大統領の個人弁護士だったコーエン氏という2人の「有罪」はアメリカでは連日かなりの時間を割いて報じられた。大統領の側近という重要な職責の人物が罪を犯したことは確かに大きい。 一方で、弾劾については下院が単純過半数の賛成に基づいて訴追するところからスタートするため、民主党からは「中間選挙はトランプ弾劾選挙」と位置付け、下院での同党の多数派奪取を盛り上げていこうという動きもある。これをみて「トランプ政権最大の危機」という見方もないではない。 ただ今のところ、米国民世論は共和党支持者と民主党支持者でロシア疑惑を見る見方は大きく割れている。疑惑捜査そのものは「魔女狩り」であり、それを伝えるのは「フェイクニュース」というトランプ大統領のいつもの指摘を支持者は信じているようだ。 というのも、トランプ大統領の罪が問えるか、現状では何とも言えないためである。マナフォート氏の罪は自分自身の脱税や銀行詐欺。すでに有罪が確定している、元安全保障担当補佐官のフリン氏の場合はも同氏の偽証である。「大統領候補の指示で不倫の関係者に口止め料を渡した」というコーエン氏の証言が正しいとしても、大統領の選挙資金法違反が問えるかどうかも微妙である。 そもそも弾劾というのは大統領が重大な罪過を犯した場合であるため、これだけではトランプ大統領の弾劾に相当するような犯罪とは現状ではどう考えても言えない。 そもそも疑惑の核心は、2016年大統領選挙へのロシアの妨害にトランプ氏がどれだけ関与していたのかに尽きる。捜査が進んで立証されることになれば、やはり弾劾に値する一大不祥事とはなるが、モラー特別検察官と連携した連邦捜査局(FBI)の捜索は進んできても、まだトランプ陣営とロシアの共謀については見えてこない。