ファミリービジネスは女性主導へ。イタリア家具の新時代【ミラノデザインウィーク】
4月、イタリア・ミラノで開催されたインテリアの祭典「ミラノデザインウィーク2024」。家具づくりの歴史が長いイタリアの中で、代々創業者一族によって受け継がれてきたブランドから、タッキーニ社の今を紹介する。 【ミラノデザインウィーク】イタリア家具の今
Tacchini 歴史的名作を現代の文脈で再解釈
ソファなどの高いパッディング技術に裏打ちされながら、斬新な家具のデザインで知られる1967年創業のタッキーニ社はブリアンツァ地方に本屋工場を構えるブランドだ。 今回のミラノサローネで発表された中で、出色はソファの「SOLAR」。イギリスのデザイナーのフェイ・トゥーグッドによるソファは薄手の布団やクッションを3枚積み重ねたようなデザインでベッドとしても使える。顔を埋もれさせ、クッションを押しつぶしたようなユーモラスなデザインだが、ふかふかで身を委ねると心地よさは抜群。クッションのパッディングに定評があるタッキーニの技術を生かしたものといえる。
タッキーニは過去の名作の復刻に力を入れているブランドでもある。1967年に最初に建築家のジョー・コロンボがデザインした「Additional System」は高さの異なる6つのクッションを縦にして波の様な形に並べていくモデュラー式家具。頭が乗る部分のクッションは高めに、腰を置く部分は低めにと身体のシルエットに合わせて弧を描くようにクッションを加えることでソファにもなるし、長くすればベッドのようにもなる可変性のある家具だ。50年以上前のデザインでありながらも、一つの部屋で仕事も食事もすれば寝ることもある現代生活においてこそニーズのありそうなタイムレスなアイテムだ。復刻するにあたり、パディングの中身はサスティナブルな素材にするなど社会状況に合った再解釈は欠かせない。 現在、タッキーニは創業者の娘、ジウシ・タッキーニがCEO兼クリエイティブ・ディレクターとして父親の後を継いでいる。歴史的名作の復刻には、過去のものを現代の文脈で再解釈する考古学者を目指していたというジウシの視点が生かされているのだろう。 イタリアを始め、長い伝統をもつ家具産業は、とかく男性主導で動いてきた。そして今でも保守的で権威的なところがある。若いデザイナーの間では、そうした旧来型のイタリア家具産業を敬遠する向きも見られる。しかし、ここに上げた3社のように歴史があり、かつ代々家族経営でありながらも、女性が率いるブランドからは、社会の変化こそ成長の機会と捉え、しなやかに対応する姿勢が見える。 問い合わせ先 コンプレックス ユニバーサル ファニチャー サプライ TEL.03-3760-0111 BY KANAE HASEGAWA