ゴールデングローブ賞2025、フェルナンダ・トーヘスがドラマ部門主演女優賞を受賞
ルーラ大統領も直電で祝福
ブラジルの人気女優フェルナンダ・トーヘス(フェルナンダ・トーレス)が、アメリカ合衆国ロスアンジェルスで1月5日(日)に行われた第82回ゴールデングローブ賞の授賞式で、ドラマ部門主演女優賞に輝いた。「オ・グローボ」、「G1」、「エスタダォン」(1月6日付け)など現地メディアが伝えている。 ニコール・キッドマン(「ベイビーガール」)、アンジェリーナ・ジョリー(「マリア・カラス」)、ケイト・ウィンスレット(「リー」)、ティルダ・スウィントン(「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」)、パメラ・アンダーソン(『ザ・ラスト・ショウ・ガール』)といった映画界のビッグネームたちと競い合っての受賞だった。 「G1」は、トーヘスの受賞は、ブラジルの映画関係者の間では、まるでワールドカップブラジルがトロフィーを手にしたような喜びようだと伝えている。 6日(月)にはルイス・イナーシオ・ルーラ・ダ・シウヴァ大統領が、直にフェルナンダに電話して、受賞を祝福した。 「私とジャンジャ(・ホザンジェラ・ダ・シウヴァ大統領夫人)もとても嬉しく思っています。まるで私たちが賞を受賞したかのようです」(ルーラ大統領) 受賞の対象となったのは、ブラジル映画「アインダ・エストウ・アキ(I'm Still Here )」(ヴァウテル・サリス(ウォルター・サレス)監督)における主演において。このカテゴリーでブラジル人が受賞したのは史上初とのこと。 「アインダ・エストウ・アキ(I'm Still Here )」は、軍事独裁政権下の1970年代のブラジルで、反体制の活動家でもあった弁護士エウニッシ・パイーヴァの生涯を描いた伝記映画。 23歳のとき、技師のフーベンス・パイーヴァと結婚したエウニッシは、4人の娘と1人の息子を授かり平和に暮らしていた。マッケンジー大学で文学を専攻していたエウニッシは、アントニオ・カラード、アロウド・ヂ・カンポスといった文学者たちとも親交があった。 1971年、夫のフーベンスが軍事政権に拘束され、続いてエウニッシと、娘の一人エリアーナも拘束された。エリアーナは24時間、エウニッシは12日間拘束されたが、フーベンスは戻ってくることはなかった。 この事件でエウニッシの人生は大きく変わっていく。マッケンジー大学に戻ったエウニッシは法律を学び、やがて軍事政権による犠牲者に関するデータ公開を求めて戦う活動家として知られるようになっていった。 映画は、パイーヴァ夫妻の5人の子どものひとり、マルセロ・フーベンス・パイーヴァが記した「アインダ・エストウ・アキ」をベースに作られている。 フェルナンダ・トーヘスはルーラ大統領との電話での対話でも、自身が演じたエウニッシについて「人権を守り抜いた女性。非常にシンボリックな存在です」と語ったという。 また、フェルナンダ・トーヘスは授賞式のスピーチの中で、母親で、映画「セントラル・ステーション」などで知られる名女優フェルナンダ・モンチネグロに敬意を表し、母親が自分の受賞を確信していたことを明かした。 実はこの映画では、70~90年代のエウニッシをフェルナンダ・トーヘスが演じ、2000年代のエウニッシを、実の母フェルナンダ・モンチネグロが演じている。 「母は、確信していました。私が『ママ、ありえないよ』と言うと、母は『あなたが持っていくわよ』と言っていました。この賞を、私の母に捧げたいと思います。みなさんは知らないと思いますが、25年前、母はここに立っていました」(フェルナンダ・トーヘス) 1999年、第56回ゴールデングローブ賞で外国映画賞を受賞したのが、トーヘスの母であるフェルナンダ・モンチネグロが主演した「セントラル・ステーション」だった。モンチネグロ本人もドラマ部門主演女優賞にノミネートされていた。 「セントラル・ステーション」の監督もヴァウテル・サリス。同監督が手掛けた映画の関係でゴールデングローブ賞が再びブラジルに届けられたことになる。 ヴァウテル・サリス監督は「メトロポリタン」紙に「フェルナンダにとっても、ブラジル映画にとっても、マルセロにとっても幸せな出来事です。ナンダ(フェルナンダ・トーヘス)とエウニッシ・パイーヴァ万歳! フェルナンダ・モンチネグロ万歳! この映画の素晴らしいスタッフそれぞれ皆万歳! 映画を愛してくれて変革を起こしてくれた観客のみなさん万歳!」とコメントした。 「アインダ・エストウ・アキ(I'm Still Here )」は、昨年12月17日に発表された、アカデミー国際長編映画賞2025のノミネートの最終候補15作品の中にも選ばれている。 (文/麻生雅人)