ブロックチェーン決済、なぜ誤解されるのか
ビジネス面
ビジネス面では、ブロックチェーンはコストを削減し、差別化されたテクノロジーによって持続可能な優位性を築くことができる。イーサリアムのメインネットの取引コストが高いことは事実だが、スマートコントラクト機能が加わることで、状況はまったく変わる。 企業は通常、複雑な契約の一部として互いに支払いを行う。これは通常、商品やサービスの受領を確認するだけでなく、合意された条件の遵守も意味する。米国生産性品質センター(APQC:American Productivity and Quality Center)は、大企業がこのプロセスを実行することにかかるコストを平均100ドル(約1万5000円、1ドル150円換算)程度と見積もっている。そのコストのほとんどは人件費だ。 そして、実際の支払いコストは10%未満であり、残りの90%はスマートコントラクトを使って対処可能だ。 スマートコントラクトは、契約条件などをチェックするプロセスを自動化し、その結果、わずかなコストで迅速な実行が可能になる。実際の支払いはオンチェーンで実行されるため、厳密には多少高くなるかもしれないが、ビジネスプロセスを実行するための総コストははるかに低くなる。EY(アーンスト・アンド・ヤング)の実際の経験では、40%のコスト削減を実現しており、この分野のスキルが向上すれば、さらにコスト削減が進むと考えられる。 このプロセスをオンチェーンで機能させるための最大の障害は、プライバシーと企業システムからのデータ統合が組み込まれていないことだった。プライバシーのないスマートコントラクトや決済は、機密データを開示し過ぎるため、多くの企業は踏み込むことができない。 ゼロ知識証明(ZKP)などを使って、これらの問題に対処できるようになった今、道筋はより明確になっている。企業システムをオンチェーンのスマートコントラクトにリンクさせる必要があることに変わりはないが、これはほとんどの場合、簡単に実装できる要件だ。 現在、スマートコントラクトが可能にする完全なデジタル・エンド・ツー・エンドのシステムは大企業に限られている。規模と豊富な資金を持つ大企業は、ブロックチェーンを使わない統合システムを構築してきた。 しかし、それらは高度にカスタマイズされ、プライベートシステム上に構築されているため、ほとんどの中小企業にとっては管理するにはコストがかかり過ぎ、複雑過ぎる。ブロックチェーンへのアクセスがビジネス界に広まれば、効率化だけでなく、中小企業と大企業の間の公平な競争の場が広がるだろう。 |翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸|画像:Shutterstock|原文:Why Blockchain Payments Are Misunderstood
CoinDesk Japan 編集部