オリックスでダメ監督だったメッツのコリンズがワールドS出場の不思議
〈ロイヤルズが2年連続でワールドシリーズかぁ〉 ワールドシリーズの組み合わせが決まったとき、知り合いの米記者と首をひねった。 なにより監督が、ネッド・ヨストさんなのである。 ある試合の序盤、初球打ちでアウトになる場面が目立つと、彼は顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。「絶対に初球を振るな!」。ーー試合前は、「今日の先発投手は制球がいい。積極的に仕掛けろ」と指示しておきながら。 試合後、メディアに采配ミスを指摘されると、しどろもどろになることも。 ーーどうしてあそこで、前進守備なんだ? 「ええっと、あれは、あの場面は・・・」 その分しかし、選手は考えて野球をしていたのではないか。昨年秋、日米野球で来日したアルシデス・エスコバー、サルバドール・ペレスといろいろ話す機会があり、インタビューの予定をすっぽかされたりもしたが、実際に話を聞くと理路整然としていて、まるでベテラン選手と話しているような錯覚に陥った。 昨季はシーズン途中にラウル・イバネスという選手が加わったのも大きかった。彼は、試合前にスマートフォンやタブレットでゲームをしている若い選手を見かねて、声を張り上げた。 「それが、今することか! 他にすることがあるだろ!」 彼は憎まれ役を買って出ると、試合前の準備の大切さを説いたのだ。 今年は、彼らの“継続的な成長”がなにより感じられる。言われてやるよりも、自分で考えて身につけたものは、本当の力になるという典型だろう。もっともそれらすべてがネスト監督の狙いだとしたら、多くの人が彼の評価を誤っているということになるけれど。 過去にオリックスで指揮を執ったメッツのテリー・コリンズ監督にも、ヨスト監督と似通った評価がある。 「ワールドシリーズへ進出した一番の理由を挙げれば、それは選手の力だ」とニューヨーク・デイリーニュース紙のアンソニー・マッキャロン記者。さらに続けた。 「マット・ハーベイ、ジェイコブ・デグロム、ノア・シンダーガードら若い先発投手陣が、予想を上回る活躍を見せた。トレード期限で、ヨニエス・セスペデスを獲得したことも大きかった」 確かに、ハーベイの復帰、デグロム、シンダーガードの急成長はうれしい誤算。セスペデスは移籍後、57試合で17本塁打、44打点をマークし、打線の核となった。 コリンズ監督が評価を下げている一因は、選手の使い方か。 昨年、松坂大輔が所属していた関係で何度かメッツの取材に行ったが、メディアから選手起用の説明を求められる場面が多々あった。 シーズン序盤、守備範囲が広く、打撃のポテンシャルもあるホワン・ラガレスではなく、力を落とし、守備もラガレスに劣るクリス・ヤングを主に起用していたことに対し、何度も質問が飛んだ。コリンズ監督には若い可能性のある若手よりもベテランを重用する傾向があり、まだチームが再建過程にあるならラガレスのような若い選手を起用すべきではとの指摘だったが、やがてヤングが戦力外通告を受け、必然的にそういう形に落ち着いた。 誰を使うかということに関しては、GM(ゼネラルマネージャー)の意向も働くので、ヤングを使い続けたのはコリンズ監督だけの考えではないはずだが、ショートのルービン・テハダを使い続けたことでも、ファンの反感を買い、昨季終了後、メッツファンはコリンズ監督の解雇を訴えた。 オリックス時代も2007年に就任したが最下位。翌年の5月に「情熱がなくなった」と辞任した。先発はどんなにペースがよくても100球前後で降板、データに基づいて相性の悪い選手は好調でもスタメンを外すなど、メジャー流の固定観念にこだわり過ぎて選手の信頼を失った。 今季は開幕の打順が、議論の的となった。2番にチームの顔とも言えるデビッド・ライトを起用したことに異論が出たのだ。