ウェブメディアの10年、転換点は? 「現実世界で事件」「記者の覚醒」PV問題、広告〝嫌われた〟変化も
効果が高いと誤解するケースも
徳力:これはマーケティング業界でもずっと言われている問題で、先日、登壇したイベントでも私「もうコンバージョン市場主義の効果測定に騙されるのは止めましょう」と言って帰ってきたんですけど。 ネットの効果測定と呼ばれているものって、あくまで今、見えている数字の「算数」だけで成り立っているんですよね。 だから、何人がこの広告を見て、何人がコンバージョン(編注:成約、この場合は広告を見た人が購入や登録など広告主側が期待する行動をすること)してくれた、それをExcelで並べて上から順番に広告手法を選んでいくみたいな。 でも一番上の、効果がありそうな広告手法は、確かに100万人が見て10人が買っているかもしれないけど、実は99万人以上はその広告を見てイラッとしている、という場合もよくあるんですよね。 最近のネット広告が「全画面を覆う」とか「カウントダウンで罰ゲームのように待たされる」とか。本来のマーケティングの効果指標って、単純な「算数」だけでは測れない定性的な人間の気持ちとか、いろんなものを含めて成果が出るはずなのに、これについてはやっぱり日本の経営が劣化してると思います。 「効果が高い」って言うけど、ただの「算数」なら小学生でもできるでしょう、みたいなレベルの効果測定だけで広告手段を選ぶという構造が、隣の業界であるメディアにも影響しちゃってると思うんですよね。 本来、広告主って、「あおりや炎上系の記事を書くメディアなんかにうちの広告は出さない」って怒らなくちゃいけないのに、「アドネットワーク(広告システム)でどこに出ているか把握できません」みたいな事例が増えてしまっているのは非常に残念ですね。 ただ、私は今、状況としてはドン底にあると思うので、これから良い変化の事例が生まれてくるんじゃないかなと思っている感じです。 水野:無料メディアを運営していて、広告がどんどん嫌われているような気がしています。足立さんにも広告についてご意見を伺いたいんですけど、NHKは広告がないですもんね。 足立:そうですね、なので個人の感想になりますが、ネット上の広告を非表示にする「アドブロック」がいよいよiPhoneの機能として標準搭載されるようになりましたね。Appleという世界的企業がそれをしているというのは、象徴的なことかなと思います。 一方で、さまざまなやり方をしているメディアが出てきていると感じていて、例えば徳力さんのいるnoteって広告がないですよね。ファンをつかんで有料のコンテンツに課金してもらったり、無料でも書籍化、作家の岸田奈美さんだとNHKでドラマ化させていただいたりとか。 あとはスローニュースさん、メディア名が示すようにじっくり質の高い報道をして、サブスクでも運営してらっしゃいます。こちらもネットの記事からノンフィクションの書籍を出版して、それがまた収益になっているという。メディアとしてはいろいろな形があり得るのだろうと思いますね。