ウェブメディアの10年、転換点は? 「現実世界で事件」「記者の覚醒」PV問題、広告〝嫌われた〟変化も
メディアが追求するべき指標
水野:この10年でニュースとSNSの関係も大きく変わりましたよね。ソーシャルメディアでシェアされることについて、何か意識していることはありますか? 徳力:私が問題意識を感じているのは、SNSを介してページビュー(PV)を稼ぐために、怒りのエネルギーを増幅するような記事を配信するウェブメディアが増えていることです。とても残念なんですよね。 例えば有名アーティストのネガティブな記事が出ると、ファンの人は心配になって見にくるし、アンチの人は炎上するまでシェアする、というように、ネガティブな記事を増やして感情を怒りの方に動かした方が、メディアが儲かるという仕組みになってしまっています。 ニュースがSNSで語られることを前提に、それを悪い形でハックするのが本当にこの数年、増えたなと思います。 実際には炎上していないのに、何件かネガティブなコメントをSNSから拾って、タイトルに持ってきて書けば、それを基に読者が本当に炎上するまでシェアしてしまう。していなかった炎上が現実化してしまうというか、メディアによってさせられてしまうみたいなことが起こっていますよね。 足立:PVの議論でいえば、メディアはそれぞれ参考とする指標を持っていると思います。指標を設定してしまうと、それを目指してしまいますし、それをハックしようとするのも発想としては当然だと思います。 業界のみなさんは一生懸命に仕事をしており、優秀な方も多くいらっしゃいます。一方で、指標の上にあるミッションや理念があまり言語化されていないこともある。それらがチームで共有されていないまま、特にマスメディアでは部署移動や転勤があり、上司も、役員も変わります。 ミッションや理念が共有されないまま、指標だけがどんどん受け継がれていき、前年度との比較などにより、同じことを繰り返す中で、より先鋭化してしまうこともあるのではないでしょうか。 だから、例えば私自身は、周りの人に「攻める」とか「刺さる」っていう言葉を「あまり使わないようにしよう」と言っていて。というのも、言葉って現実化するので、本当に攻める、刺さるという言葉のイメージに近いコンテンツが出てしまうことがあるんです。 水野:以前BuzzFeedの編集長だった神庭亮介さん(現ダイヤモンド・ライフ編集部副編集長)が、PVやCVだけじゃなくて“じんわりビュー”みたいな、後々までずっと人の心に残っている、そういうビュー指標があればいいのに、と話していたんですよね。 【参照】PVじゃない指標って?ウェブメディアの「これから」あの番組の魅力 - withnews https://withnews.jp/article/f0220709001qq000000000000000W07n10201qq000024912A 私はそれがwithnewsの強みだと思うんですけど、その数値化はどうしても難しいんです。