「千手観音投法」のクラーク国際・エース 強力打線を幻惑 センバツ
◇センバツ高校野球第7日(25日)2回戦 ○沖縄尚学3―1クラーク記念国際(北海道)● 【クラーク記念国際vs沖縄尚学を写真で振り返る】 多彩な変化球を操る投手はたくさんいるが、投げ方まで自在に変えられる投手は限られる。クラーク記念国際のエース右腕・新岡歩輝は、変幻自在の投球で強打の沖縄尚学に立ち向かった。 スリークオーターを軸にサイド、アンダースローと腕の位置を微妙に変えた。言わば「千手観音投法」で相手打線を幻惑した。さらに、スライダーやチェンジアップなど「6、7種類」の球種を投げ分けた。 下級生だった前回は遊撃手で出場した甲子園に、今度はエースとして戻ってきた。初めて立つ聖地のマウンドに浮足立ったのか、一回に1死満塁のピンチを招くと、すかさずベンチから伝令が来た。具体的な指示はなく、「楽しもう」とひと呼吸置くだけだったが、「冷静になれた」。次の打者を118キロのチェンジアップで併殺打に仕留めた。 二回は「ピンチを切り抜けて気持ちが乗った」と、自己最速に並ぶ140キロを計測した。だが、落とし穴は三回だった。「警戒していた先頭打者に安打を許したのがよくなかった」。再びリズムが乱れて2失点。直球を痛打される場面が目立ち、全国レベルの攻撃力を思い知った。 ただ、失点は「3」と試合は作った。敗れたものの、131球で完投し、「自信を持ってプレーする姿を見せることができた」と納得顔だった。 3番打者として甲子園初安打を記録するなど、投打で成長は示した。佐々木啓司監督も「春に向けて取り組んだ成果を出せた」とたたえた。 一方で、最も欲しかった白星はまたもお預けとなった。「1勝できなかったのが悔しい。もっと変化球の精度を上げたい」。主将も務めるチームの大黒柱は春に得た手応えと課題を持ち帰り、夏こそ「三度目の正直」を目指す。【川村咲平】