【イベントレポート】森山未來がキュレーター務める「山田悠 + サム・ワイルド 2人展」本日スタート
森山未來がキュレーターを務めるアートプログラム「AiRK Research Project vol.2 山田悠 + サム・ワイルド 2人展『Walls ans Frogs -境界線に見るあわい-』」が本日11月2日に兵庫・神戸ローズガーデン(KITANO THE MAGNET)でスタート。それに先がけて昨日1日に森山と山田、ワイルドが会見を行った。 【画像】「AiRK Research Project vol.2 山田悠 + サム・ワイルド 2人展『Walls ans Frogs -境界線に見るあわい-』」より、左から森山未來、山田悠、サム・ワイルド。(他6件) 「AiRK Research Project」とは、2022年に兵庫県神戸市北野に開設された滞在型の芸術家向け作品制作施設・Artist in Residence KOBE(AiRK)が、2023年度より行なっている作家滞在型の展覧会プログラム。その第2弾となる今回は、AiRKのメンバーである森山のキュレーションのもと、現代アーティストの山田悠とサム・ワイルドの2人展が実施される。 まずは2人のアーティストについて森山が紹介。「山田さんは、2022年に行われ、僕がメインキュレーターを務めた『Kobe Re:Public Art Project』で招聘した23組のアーティストの内のお1人で、当時できたてだったAiRKに滞在していただきました。そのとき山田さんは『北野の壁が面白い』というお話をしていて、(神戸の廃屋をリビルドする集団・西村組が運営する空間)バイソンギャラリーで神戸の壁について語る会・壁面倶楽部を開いたりもして(笑)。北野の壁を見て、山田さんが人や歴史の多様性を感じる、というところが面白いなと思い、今回お声がけさせていただきました」と話す。 一方のワイルドは、9月から神戸に滞在し、リサーチを続けているイギリス人アーティスト。森山は「彼はもともと自然科学を大学で専攻されていましたが、テキスタイルやデザインの方面に進んでいったアーティストです」と紹介し、「今回は彼自身が作成したカエルのステッカーを来場者1人ひとりにお渡しして、それを壁に張り込んでいくという作品が披露されます。ステッカーは1000枚くらいあるのですが、すべてデザインが異なり、1つとして同じものがありません。観客が壁のどの位置にどうやってそのカエルを貼っていくのか。それによって生まれてくるものを見る、という作品になります」と説明した。 さらに森山は「どちらも壁がテーマの作品になっています」と言い、「本来、壁は何かを隔てるものですが、そこにグラデーションがあり多様性があることを可視化することで、壁に対する新しいアプローチの提案ができるのではと思い、今回の展覧会に『境界線に見るあわい』というサブタイトルをつけました」と話した。 山田は、フロッタージュという“乾拓”のような手法で壁を和紙に写し取った「不整合の擁壁」や、不整合の擁壁のリサーチにあたって撮り溜めた壁の写真を再構成して作り上げたポスター「不整合の擁壁のリサーチ」ほかを発表。“不整合”とは、何らかの原因により、堆積層に時間的な連続がないことを示す地質学用語で、山田は「地層は1人の力で変えられるものではなく、災害など大きな要因で変化するもの。北野の壁には、北野の土地のあり方に通じるものが視覚化されています」と話す。また坂が多い神戸には、勾配に建築物を建てるため、擁壁が多く作られていて、そこには自然の力と人間の力の拮抗を感じると語った。 ワイルドは今回が初来日で、神戸に住む人たちをリサーチしたと話す。両生類のカエルをモチーフにしたのは、神戸に海と山があるからで、タイトルの「EQUI」はラテン語で「平等」を意味する。また今回の作品には、日本人が神社で行う積石や、空間に来場者が丸のステッカーを貼っていく草間彌生のエキシビジョンにインスパイアされているという。さらにワイルドは「カエルのステッカーはパターンなどが1000枚すべて異なり、どれ1つとして同じものがありません。そんな“個性”を持ったカエルを、それぞれがどのように貼るのか。西洋は個人主義で日本は集団主義寄りだと言われますが、個人主義にも集団主義にもきっとグラデーションがあるはずで、この作品を通して日本人の“間(あわい)”が見えてくるのでは」と話した。 「AiRK Research Project vol.2 山田悠 + サム・ワイルド 2人展『Walls ans Frogs -境界線に見るあわい-』」は11月24日まで。水曜は休廊日となっている。