米軍基地建設進む辺野古大浦湾で大量の「濁り水」発生 生物への影響に懸念強まる
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古周辺への移設計画で、軟弱地盤のあるキャンプ・シュワブ北側(大浦湾側)エリアの護岸整備工事が8月20日に始まった。それに先駆けて7月4日から行なわれていた杭打ち試験では海面に濁り水のような広がりが生じていたことがわかっており、本格工事で湾内に生息する生物への影響も懸念されている。 現場から濁り水状の広がりが出ているのは、土木技術者で沖縄ドローンプロジェクトの奥間政則氏(58歳)が7月8日に空撮してわかった。写真には大浦湾の工事用クレーン船に隣接する汚濁防止膜のエリアから発生したとみられる白い濁り水のようなものが、扇状に広がっているのが写っている。 辺野古新基地建設をめぐっては防衛省が2018年3月に公開した地質調査報告書から大浦湾の海底部に軟弱地盤が広範に広がっていることが判明。その後、同省は地盤改良工事を行なうため沖縄県に申請した「公有水面埋立変更承認願書」で「人為的に加えられる懸濁物質は2mg/L(※)以下であること」とする環境保全基準との整合性は図られているとした。 奥間氏は写真に写った濁り状のものの長さが400メートルほどで、海底への杭打ちの影響から海面に舞い上がった泥だと指摘。防衛省が基準とした濁りの2mg/Lは通常の海水と見た目が変わらない程度の透明度のため、海面に濁りが発生した時点で100mg/Lを超えているだろうと推測する。 懸念されるのは水中生物への影響だ。世界的にも生物多様性豊かな大浦湾には5000種類以上の生物と200種類以上の絶滅危惧種が生息。19年には海洋学者のシルビア・アール博士が進める海洋保全プロジェクト「ホープスポット」認定地に国内で初めて選ばれた。昨年5月には東京大学の馬渕一誠名誉教授のチームが、20年に奄美大島などで発見された新種のウミエラを大浦湾でも見つけた。 すでに湾内の生物に影響が出たとの報告もある。沖縄ドローンプロジェクトは18年にキャンプ・シュワブ南側(辺野古側)のN3護岸工事で濁り水が流出したのを撮影。その後、日本自然保護協会が現場付近の海底を確認した結果、ジュゴンのエサとなる藻場が死滅していることがわかった。死滅した海藻には工事の流出土砂と思われる泥が大量に堆積していた。