映画『プロミスト・ランド』:杉田雷麟と寛一郎が語り合う、マタギの山で過ごした日々
山奥の撮影現場で深めた絆
撮影が行われたのは、実際にクマ狩りが行われる春先のこと。雪解け水により量も勢いも増した冷たい川を、狩猟道具を担いで礼二郎と信行が黙々と渡る場面は、ドキュメンタリー映画のようなリアリティがある。2人は口をそろえて「ビックリするくらい冷たかったですよ!」と声を大にしつつ、「カメラに映っていない撮影スタッフの方が、僕ら以上に大変だったと思いますけどね」と過酷な舞台裏を明かす。 杉田 僕らの荷物は役の持ち道具だけですが、スタッフさんは重い機材を担いで、毎日1時間以上かけて山道を歩いて現場まで行かなければいけない。みんなで同じ苦しみを味わいながら、一丸となって挑んだとも言えます。道中、前から後ろへ「雪が解けてきてるから気を付けて!」と情報共有したり、時にはくだらない話もしたりしながら…(笑)。で、いざ現場に着いたらそれぞれの持ち場でプロの仕事をしっかりこなす。みんなで一つの映画を作っている実感がありました。 劇中に登場するクマ撃ちの儀式の場面では、仕留めたクマの頭を北に向け、腹の上に一本の枝を乗せるなどして魂を鎮めた後、丁寧に解体していく様子もリアルに描かれる。最近はめったにクマが獲れなくなっているそうだが、事前に猟友会のメンバーが仕留めたクマを雪の中で保存してくれていたため、撮影には本物を使うことができたという。 寛一郎 撮影後、地元の方たちがクマ汁を現場に差し入れてくださったんですよ。キノコや豆腐、ネギがたっぷり入った醤油ベースのスープで煮込んであるんですが、新鮮だったから臭みもなくて、めちゃくちゃおいしかったです。 杉田 あれは本当においしかったなあ…。山菜の天ぷらとか、カタクリの漬物もすごくおいしくて。ロケ先で食べさせてもらった卵かけごはんの味も、シンプルなのに、なんとも言えないおいしさで…(笑)。 寛一郎 山形って、山だけじゃなく海もあるから食材が豊富なんですよ。パリパリじゃなくて、しっとりした海苔(のり)もおいしくて、みんなお土産に買ってましたね。 杉田 その海苔、僕も食べました! 海苔の層が重なっていて、食感もたまらないんですよ。 撮影現場に同行したスタッフが撮ったクマ汁の写真を一緒に見返しながら、山と海の恵みが味わえたロケ飯の話題で盛り上がる2人。自然と対峙する過酷な撮影を共に乗り越え、同じ釜の飯を食べたからなのか、共演者を越えた“同志”のようにも映る。 杉田 現場でも、本当に“お兄ちゃん”って感じで。 寛一郎 うそつけ(笑)! 杉田 いや、本当に。一緒にお風呂にも入ったし。 寛一郎 スーパー銭湯に行ったね。雪山をみんなで歩き、昼には握り飯を食べ、山を眺めていると、都内で撮影するより気持ちが穏やかになります。特に芝居について話したりするわけでもなく、たわいもない会話しか交わさなくても、毎朝5時、6時に出発して、トイレもない山中で撮影して、暗くなる前に帰ってくる。そんな生活を繰り返していれば、どうしたって距離も近くなりますよ。雷麟は撮影の時20歳だったと思うんですが、実年齢よりも大人っぽい。でも、接していくうちにだんだんシャイで年相応なところも見えてきて。かわいいヤツです。