新年の歌舞伎座にあの『大富豪同心』が新作歌舞伎として登場! 中村隼人、松本幸四郎、尾上菊之丞が意欲を明かす
松竹創業百三十年の幕開きを飾る公演、令和7年1月歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」が、2025年1月2日(木) に初日を迎える。その夜の部に上演される『大富豪同心 影武者 八巻卯之吉篇』は、幡大介による長編小説を原作とした新作歌舞伎だ。12月16日、都内にて本作品の取材会が実施され、演出の松本幸四郎、演出・振付を担う尾上菊之丞、主演の中村隼人が公演への意欲を語った。 【全ての画像】『大富豪同心 影武者 八巻卯之吉篇』取材会の模様ほか(全11枚) 小説『大富豪同心』(双葉文庫)は、大富豪が同心となって難事件を解決する意外性で人気を得て、累計100万部を超える大ヒットを記録。2019年にはNHK BS時代劇「大富豪同心」シリーズも放送を開始し、2023年には第3シリーズを放送、この年末には「大富豪同心スペシャル」が放送されるなど根強い人気を誇る。このテレビドラマに主演し話題を呼んだ隼人が、今回の歌舞伎化でも主役の八巻卯之吉と幸千代の二役を勤めるとあって、時代劇ファン、歌舞伎ファンの期待を集めている。
眼目は、気絶。早替り、総踊りにも期待
取材会ではまず、演出を手がける幸四郎が紹介され、「初めまして(笑)」と挨拶。「演出させていただくのは初めてです。この作品はテレビでも出演させていただいておりますが、娯楽時代劇として本当に面白い。隼人くんがそれに出会ったのは本当に素敵なことだなと思います。隼人くんが“ここにある”というものを作りたい」と述べた。 演出・振付の菊之丞は「ドラマを拝見すると隼人さんにぴったりで、隼人さんの新たなものを引き出す作品に出会われたのだなと思いました」。幸四郎については、「若い頃からずっと一緒に似たようなことをやってきましたが、演出としてクレジットされるのは初めてかと思います。幸四郎さんからあふれ出てくるさまざまなものを受け取りつつ、具現化するお手伝いを一緒にできることを嬉しく思います」と笑顔を見せた。 続いて隼人は、「時代小説は主人公が活躍して格好良く終わるというイメージがある中、この卯之吉は刀を見ると気絶したり、小判をばら撒いたり、ドラマではダンスのシーンもありました。原作の小説をもとに、それをどう歌舞伎に落とし込んでいくのか──。二役を早替りで演じますが、時間の都合上、顔の色はそのまま。そこは幸四郎さんの演出の意図に沿うようやっていきたいです。見どころのひとつはダンス。また、昨年卒業した「浅草歌舞伎」のメンバーも集結、同世代たちとともにこうした作品をつくることができ、本当に嬉しく思います」と、胸の内を明かす。 テレビドラマでは皆揃ってのエンディングダンスが大評判だが、歌舞伎ではどんな踊りが登場するのか。菊之丞は「卯之吉は吉原や深川に通って遊びをしている人物なので、踊りがつきものです。それが古典舞踊なのか、新たな振付けにどんな曲が使われるのか、そういったことも楽しみにしていただきたい」とほのめかす。いっぽう隼人は、「眼目はやはり気絶。あれをどう舞台で表現するのかということはありますが、歌舞伎役者の皆で踊る、というのは叶うといいですね」。 記者から、あらためて隼人の役柄に関して問われると、幸四郎は「歌舞伎の演目ではあまりない役どころ。 “こういうものを持っているんだ”と皆さんに驚いていただきたいと思っています」と期待感を煽りつつ、「総踊りは……、これは、ありますね」とさらりと漏らし、周囲は大慌て。 さらに、「あとは二役。早替りで似た人になるというのはおそらく、歌舞伎史上ないことだと思います。早替りは別人になるから驚くわけですが(笑)、顔がそっくりそのままの二役を演じるというのをどうするか──。いまの予定では早替りは11回です」。隼人は「多いですね……」と驚きを隠せない。さらに幸四郎は、「娯楽時代小説、娯楽時代劇ですから、娯楽、というのはひとつのキーワード。でもその中には、美鈴という卯之吉に思いを寄せる女性もいる。際立ったキャラクターばかりで、歌舞伎の演目になることは必然的な気がします」とも。