花街のことば「自前になる」って?
舞妓(まいこ)が5~6年の修業を積んで芸妓になると、住み込んでいた置屋を出て自活する。芸事とおもてなしのプロとして独り立ちすることを「自前になる」という。 五花街の一つ、祇園甲部の芸妓・槇里子(まりこ)さんは8月下旬、自前になった。置屋では女将(おかみ)らと暮らし、衣食住や宴会のスケジュール管理もお世話になっていたが、今はすべて自らが担う。「これからは自分に責任がある」と気を引き締める。 日中は祇園甲部の「八坂女紅場(にょこうば)学園」で京舞、鳴物、三味線、茶道、書道の稽古に励み、夜は宴席へ。合間に家事もこなすのは大変だが、「身近に目標となる自前のお姉さん(先輩芸妓)方がたくさんいはる。舞がすてきだったり、宴会で場を和ませたり。うちもがんばってみようと思います」。 五花街では資金面などの不安から独立せずに引退する若手も多い。自前になる道を選んだ芸妓には伝統の担い手として期待がかかるが、槇里子さんはロールモデルの存在を支えに、ひたむきに歩んでいくだろう。(編集委員・木須井麻子)