大学中退して先が見えなかった20代「元ヤングケアラー」、意外な「母の形見」によって前を向けたワケ
「シェア型書店の店主」になった理由
三島さんは現在、東京都渋谷区ヒカリエにある「渋谷○○書店」の店主をしています。 渋谷○○書店は、個人に棚を貸し出し、「棚主」となり、共同で運営するシェア型書店です。棚主それぞれが好きな本を持ち寄って販売。店内には読書ブースや著者や編集者を招いた「企画棚」などがあります。 三島さんが店主になったきっかけを、次のように話します。 「(店主になったきっかけは)2つあります。1つ目はある編集者に出逢い、渋谷○○書店を知ったこと。2つ目はヤングケアラー、若者ケアラーというワードや存在を知ったのが、本を読んだことがきっかけだったからです。 ヤングケアラー、若者ケアラーの存在を1人でも多くの方々に認知してもらいたいと考えています。関西出身、関西住みなのですが、関西より東京の方が人口が多く、あらゆる人たちに知ってもらえると思いました」(三島さん)
居場所だけが支援ではない、その先にあるもの
三島さんは、自身のヤングケアラー経験や支援活動や講演などを通して、居場所だけが支援ではないと話します。 「クラスメイトや地域住民などもヤングケアラーに頼もしい存在になると考えます。ヤングケアラーにとって少しずつできることを探し、一緒に考え行動できる社会や環境になるのが大切ではないでしょうか」(三島さん) そう話す三島さんの今後の夢は、母親みたいな介護士になり、この人と出会えてよかったと思える人になりたいと続けます。 「母親の葬儀の時、たくさんの人が弔問に訪ねてくれました。介護職員だった母親がどれほど人から慕われていたかよくわかりました。介護職員は利用者さんの最期に接することができる数少ない仕事です。ケアギバーという言葉があるように、ギバー=人に何かを与える仕事はなかなかありませんからね」(三島さん) このように三島さんは、ヤングケアラー・若者ケアラーの支援・講演活動、折り鶴ストラップ、渋谷〇〇書店の活動から新たな一歩を踏み出しました。その結果、多くのヤングケアラーや若者ケアラーをサポートしています。 筆者も、30代前半から認知症祖母やガン・精神疾患の母親をほぼ1人で10年間ケアや見守りを経験。介護離職、ひきこもり、生活困窮、ダブルケアになり暗いトンネルを歩く中、ブログで介護の体験談を発信していたところ、介護・福祉ライターのオファーがきました。そして、『おばあちゃんは、ぼくが介護します。』を商業出版、大学や企業などで講師、支援団体「よしてよせての会」代表、今年5月からは大阪市旭区合同会社シェア(相談支援Kaveri)でケアラー支援事業部責任者に就任しました。 今、ケアでしんどく苦しい読者がいると思います。しかし、地道に頑張ればきっと誰かが見てくれチャンスを与えてくれます。明るい未来が待っていると信じてください。応援しています。 ---------- 奥村シンゴ 大阪相談支援KAVERIケアラー事業部責任者、介護福祉ライター、講師、支援団体「よしてよせての会」代表。 NHKで解説の他、取材・執筆や大学・自治体など講演多数。また、大阪や兵庫(宝塚中心)に啓発や居場所活動を積極的に展開中。 著書『おばあちゃんは、ぼくが介護します。』2023年夏国際ソロプチミスト神戸東クローバー賞受賞。介護離職や若者ケアラー~就職氷河期10年(ダブルケア、ひきこもり含)経験。生粋の阪神ファン。 ツイッター @okumurashingo43 Facebook、TikTokは 奥村シンゴ で検索 ----------
奥村 シンゴ(大阪相談支援KAVERIケアラー事業部責任者、介護福祉ライター、講師、支援団体「よしてよせての会」代表)