“減築空間”に世界中のユニークな古物が集まる『銀 吉村』。
東京都内の駅名を「あ」から五十音順に選出し、その駅の気になる店やスポットなどを ぶらりと周っていく連載企画「東京五十音散策」。「か」は春日、蒲田に続き学芸大学へ。
シンプルなゲーム内容にもかかわらず妙に中毒性がある世界的パズルゲーム・テトリスが誕生して今年で40年らしい。それだけに、オブジェクトやグラフィックデザインなど創作物のインスピレーション源にされてきたことも少なくないだろう。 東京五十音散策 学芸大学①
学芸大学駅から西口商店街へ徒歩8分、アパートの一階にある『銀 吉村』は、そんな奥深いテトリスの意向をとことん内装に落とし込んだヴィンテージのインテリアショップ兼ギャラリー。というのも、オーナーの吉村駿介さんが“減築”をコンセプトに仕上げた店内は、ブロック状にくり抜かれた床、什器となるホワイトキューブやウォールシェルフなど、空間を構成する要素すべてが40cmの倍数で設計されているのだ。つまり、配置を変えられることはもちろんのこと、思いつきで横向きにしてみたり、重ねても、ズレがなく自由自在にディスプレイを変えられる。
「第24回 岡本太郎現代芸術賞で特別賞を取った建築作家の浮遊亭骨牌(ふゆうてい・かるた)さんを中心に、僕も含めて3人で作り上げたんです。日本で見たことがない空間を目指したはいいものの、前例がなかったので約2ヶ月間休みなく作業に明け暮れてました」。
そうして設計図なしで作り上げられた店内には、アメリカやヨーロッパをはじめ世界中から買い付けられた、自身が心をくすぐられる古物が分け隔てなく揃う。’50年代の抽象的なウッドオブジェクトやポストモダンの影響を受けたドイツ製のピラミッド型パズルの自由な表情を眺めていると、凝り固まった頭がほぐされていく気がしてくる。
ここで手に入れたユニークな古物を持ち帰り、レイアウトがハマるといつも以上に爽快。空間そのものを楽しむマインドまで得られるこのお店も、それこそテトリスのような中毒性があるから要注意かも。
インフォメーション
銀 吉村 下北沢の古着屋『フロクシノーシナイヒリピリフィケーション』の2号店として、昨年11月にオープン。『銀 吉村』の店名通り、もともとはシルバージュエリーに特化させた店を予定していたため、雑貨だけでなく一角に’80~’90sのリングやネックレスなどが100点ほど並ぶ。仕入れる国は固定せずにどこへでも行くそうで、今回の取材時はローマとミラノで買い付けた品々が中心だった。 ◯東京都目黒区五本木3-32-8 104号室 15:00~20:00 月・火・水・木休 photo: Hiroshi Nakamura, text: Fuya Uto, edit: Toromatsu
POPEYE Web