『あの花』『ここさけ』『空青』を彩った名曲を振り返る チーム最新作『ふれる。』への期待
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(フジテレビ系)をはじめとする“秩父三部作”を手がけた、長井龍雪(監督)×岡田麿里(脚本)×田中将賀(キャラクターデザイン)による、オリジナル長編アニメーション映画最新作『ふれる。』が10月4日より全国公開となる。この座組としては5年ぶりの作品であること、主題歌「モノトーン」をYOASOBIが担当することが話題になっている。 【画像】アニメーション映画『ふれる。』出演声優一覧 『ふれる。』は、幼馴染三人組小野田秋(CV:永瀬廉)、祖父江諒(CV:坂東龍汰)、井ノ原優太(CV:前田拳太郎)、そして不思議な生き物“ふれる”を中心に描いた作品。“ふれる”の持つ、お互いの身体に触れ合うことで相手の心の声が聴こえるという力によって、三人の友情が揺れ動いていく。ハリネズミにも似た“ふれる”の可愛さ、精細な背景描写とキャラクターの生き生きとした表情、心を揺さぶるエモーショナルなストーリー展開ーー主人公三人の声を務めるKing & Princeの永瀬、若手実力派俳優の坂東と前田による、ケレン味の無い自然体の演技にも期待が高まる作品だ。 長井龍雪×岡田麿里×田中将賀からなるクリエイターチーム“超平和バスターズ”がこれまでに手掛けてきた『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(以下、『あの花』)、映画『心が叫びたがってるんだ。』(以下、『ここさけ』)、映画『空の青さを知る人よ』(以下、『空青』)はハンカチ必須の感動作で、いずれも埼玉県・秩父市を舞台にしていることから“青春三部作”や“秩父三部作”などと呼ばれ、多くの視聴者を感動の涙で包み込んだ。 “超平和バスターズ”が手がける作品の根底に共通して流れているのは、過去と未来、後悔と希望、そして伝えたい想いがあるということ。作品と密接にリンクしながら、そのアーティストの楽曲としても独り立ちできる熱量を持った主題歌は、互いを引っ張り合うようにしてそれぞれの魅力を高め合い、時代を超えた普遍の名曲として今も愛され続けている。 テレビアニメシリーズ『あの花』(2011年)では、OPテーマにロックバンド・Galileo Galileiの「青い栞」、EDテーマはガールズバンド・ZONEによる2001年の大ヒットナンバー「secret base ~君がくれたもの~」を『あの花』に登場する女性キャラクターの本間芽衣子(CV:茅野愛衣)、安城鳴子(CV:戸松遥)、鶴見知利子(CV:早見沙織)の3人がカバーし、同曲は『あの花』を象徴する楽曲となった。 主人公・じんたん(宿海仁太)の前に死んだはずのめんま(芽衣子)が幽霊となって現れ、小学校時代の仲間とともにめんまの願いを叶えるために奔走し、失われていた友情を取り戻していく。「青い栞」は、青春時代の思い出のアルバムをめくりながら、欠けてしまったパズルのピースに馳せるような思いが、キラキラとしたギターサウンドと浮遊感あるボーカルで表現された。劇場版公開からちょうど10年目の昨年には「THE FIRST TAKE」で、Galileo Galilei×茅野のコラボによる同曲の歌唱映像が公開されて話題を集めた。 また「secret base ~君がくれたもの~」は、夏の終わりの儚い情景と別れの悲しみを歌ったミディアムバラードで、歌詞の〈10年後の8月 また出会えるのを 信じて〉がキーワードとなり、2013年に公開された劇場版では「secret base ~君がくれたもの~(10 years after Ver.)」として劇中歌に起用。2021年に開催された10周年アニバーサリーイベントでも、同曲の歌詞になぞらえた朗読劇『十年後の八月、秘密基地にて。』が披露された。作品と寄り添い合い、大切に歌われてきた同曲は、時代を経ても色褪せない魅力を持っている。 『ここさけ』は、とある出来事きっかけに、喋ると腹痛を起こす“呪い”にかかり、人と喋ることができなくなってしまった主人公・成瀬順が、地域の交流会の実行委員に任命され、クラスメイト三人とともにミュージカルに挑戦する物語。乃木坂46が歌う主題歌「今、話したい誰かがいる」は、脚本の岡田麿里が作詞家・秋元康にストーリーを伝えて作詞されたとのこと。アイドル然とした“切な爽やか”な楽曲に、ほろ苦い青春と心を通わせる友がいることの心強さを歌った歌詞が、アニメ作品との高い相乗効果を発揮した。手話のシーンが取り入れられたMVでは、ダンスを通じて友情を深めていくストーリーが描かれ、『ここさけ』とは異なるもう一つの感動のドラマが展開された。 『空青』は、シンガーソングライターのあいみょんが、主題歌「空の青さを知る人よ」と、ED主題歌「葵」を担当した。高校2年生の主人公・相生あおいと姉・あかね、あかねの元恋人・金室慎之介、13年前の慎之介の姿で現れたしんのの4人が、バンドを通して一度は失った恋や人生と向き合っていくストーリー。その主題歌「空の青さを知る人よ」は、涙をこぼすまいとして上を向くと、その先に青い空が広がるーーといった前向きなイメージが浮かぶ。歌詞中ではあおいの心の中に広がる前向きな気持ちとネガティブな気持ちが、“青と赤のコントラスト”で表現された。また、モノクロの映像から始まり、終盤で色がついて青い空が印象的に映るMVも話題を集めた。