高平高輝の自動車10大ニュース 年末発表の衝撃は大きかった! 第1位は清水草一氏のトップニュースと同じあの話題
本当に実現するのだろうか
数多く登場した新型車や欧州を端に発したEVの失速、特定のメーカーだけにはとどまらなかった型式認定の不正問題など、2024年の自動車業界で起こった様々なニュースの中から、気になった話題をピックアップし、ランキング形式でお伝えしてきた「2024自動車10大ニュース」。いよいよ最後は、モータージャーナリストの高平高輝氏の第1位です。 モータージャーナリストの高平高輝氏が選んだ2024年自動車10大ニュースの第2位はコチラ ◆第1位 日産とホンダの経営統合計画はどうなる? 師走も半ばを過ぎた頃に飛び込んできたニュースだけに今年最後の話題としてインパクトは大きかった。日経新聞の第一報を受けて、12月23日に急遽(と見える)開かれた記者会見には、日産自動車と本田技研工業、さらに三菱自動車工業3社の社長が並び、将来の経営統合に向けて協議することを合意したと発表した。 ◆100年に一度の変革期を象徴 現時点ではあくまで協議を始めたというに過ぎず(日産が大株主の三菱も検討を開始)、まだ先行きは不透明だが、それにしてもあの日産とホンダが持ち株会社の下に同じグループとして一緒になるのか、とそれぞれの歴史を知るクルマ好きには感慨ひとしおではないだろうか。まさに「100年に一度の変革期」を象徴するようなニュースである。統合の目途は2026年8月だという。 とはいえ、ホンダの三部社長が繰り返し明言したように、「これは日産の救済ではない」という。この協議の行方は何よりも日産がまず自力で経営を立て直せるかどうかにかかっている。背景に日産の業績悪化があることは言うまでもない。 ◆日産の自力再建と経営陣の刷新が大前提 かろうじて赤字ではなかったものの今年の中間決算では営業利益が前期比約90%減、純利益は93%減の192億円と著しく悪化したことを発表、通期の純利益も未定とした。それを受けて生産能力の20%削減とグローバルで9000人の削減というリストラ策を打ち出したが、その詳細もいまだ明らかではない。しかもそれは今年春の「2026年度まで世界販売100万台増、営業利益率6%以上」という中期計画の発表からわずか半年後のことだ。 もともとその計画を額面通りに受け止める人は少なく、「非現実的」あるいは「絵に描いた餅」と批判する関係者が多かったが、実際に短期間でまったく正反対の結果になったことは経営陣の見通しの甘さを表していると言えるだろう。日産のモデルラインナップの貧弱さは専門家でなくても一目瞭然なのである。 ◆実現すれば800万台で世界第3位 ホンダにしても“お荷物”を抱え込むほどの余裕はないが、単独で山積する課題に対処するよりも規模を拡大した方が将来に向けての投資力が増すとの判断があったのかもしれない。さらに両社の社長は「与り知らないこと」と否定したが、いまだ実質的に39%余りを保有し日産の筆頭株主であるルノーが台湾の鴻海精密工業と交渉中という海外報道があったことが、とりあえずの“婚約発表”を後押ししたのかもしれない。外資傘下になることを恐れた政府の意向があるという見方もある。 もし3社の統合が実現すれば生産規模800万台以上の世界第3位グループが生まれることになるが、そんなダイナミックな熱気を感じさせることのない、淡々とした記者会見だった。繰り返すが、まずは日産の自力再建と経営陣の刷新が大前提だからであろう。 文=高平高輝 (ENGINE WEBオリジナル)
高平高輝