劇的な勝利に嬉し涙も…27年ぶりの選手権出場狙う四日市工、総体代表校の三重をPK戦の末に下して決勝へ!!:三重
[11.2 選手権三重県予選準決勝 三重高 2-2(PK4-5) 四日市工高 LA・PITA東員スタジアム] 【写真】影山優佳さんが撮影した内田篤人氏が「神々しい」「全員惚れてまう」と絶賛の嵐 第103回全国高校サッカー選手権三重県予選準決勝が2日に行われ、インターハイに続く全国大会出場を目指す三重高と27年ぶり3回目の選手権出場を狙う四日市工高が対戦。2-2(PK5-4)で勝利した四日市工が9日に行われる決勝へと駒を進めた。 「選手がゾーンに入っている。四中工が勝ち上がる時と同じ空気ですよ」。試合後、山崎崇史監督は興奮気味にそんな言葉を口にした。四日市中央工高のコーチを長きに渡って務めてきた指揮官が就任したのは2年前。過去に2度の選手権出場経験はあるが、近年は県の上位に入れなかったチームが昨年、一昨年と2年連続で準々決勝まで進めるようになった。それでもベスト4の壁は越えられずにいたが、一気に決勝までたどり着いた。 勝利までの道筋は一筋縄ではなかった。準決勝の相手はインターハイの代表校である三重。注目のアタッカーFW水野愛斗(2年)を筆頭にアタッカー陣にタレントが揃うため、我慢の時間が長くなるのは想定内。主将のMF伊藤和史(3年)は「苦しい展開でも笑顔を意識して、どんな状況でも楽しむのがこの試合での共通認識でした」と振り返る。 守備も相手にボールを持たれることを想定したプランで、山崎監督はこう明かす。「うちは身体能力が高くないので、コンパクトにして選手同士の距離を縮めたい。裏での勝負になるのはしんどいのでラインを高く保ちながら、裏へのボールは全てGKと言っていた」。 ゴール前まで持ち込まれる場面もあったが、守備陣の粘り強さも目を見張り、前半15分には水野にドリブルでゴール前に侵入されたが、追いかけたDF畑山遥斗(3年)がスライディングでストップ。サイドで積極的な仕掛けを見せた三重MF橋本紘和(3年)に対しても、DF渡部巧(3年)がしっかり対応し、最後の局面で仕事をさせない。無失点のまま試合を進めると29分には中央でのこぼれ球に反応したMF木下芭瑠(3年)が豪快なミドルシュートを叩き込み、四日市工が1点リードで前半を折り返した。 エンドが変わった後半も劣勢が続く。後半9分には後方からのパスを受けてゴール前に仕掛けた水野を倒し、PKを献上。これを水野自身に決められ、試合は振り出しに戻った。24分にはDF黒柳栄登(3年)のクサビを受けたFW奥山倖之介(3年)が左にはたき、MF前山塁生(2年)がゴール前に速いボールを展開。水野にスライディングで合わせられたが、ポストに救われて1-1で延長戦に入った。 延長戦でも三重のペースで試合は進み、延長前半3分には右サイドを抜けた水野がシュート。ゴール前にこぼれたボールを前山に押し込まれ、三重に逆転を許す。以降は1-2のまま時計の針が進んだが、四日市工の選手に諦めた様子は見られない。山崎監督も「絶対に追いつけると思っていたし、PK戦になっても勝つと思っていた」と口にする。試合終盤に攻勢を仕掛け、延長後半10分には左CKを獲得。クロスを跳ね返されても、ゴールを狙い続けると最後は途中出場のFW三村琉心(2年)が決めて、PK戦に持ち込んだ。 迎えたPK戦では1番手のキッカーが三重に防がれたが、GK橋本幸汰(3年)が4番手と6番手のキックを止めて勝負あり。「これが選手権の力」(山崎監督)という劇的な試合展開を物にした。 山崎監督がこれまで指導してきた四中工は全国大会出場を目指してきたチームだったが、就任した当初の四日市工は違う。「サッカーを嫌いにさせないようにしなければというのがスタート」(山崎監督)だった。それでも過去2年は選手の頑張りもあって、県のベスト8まで進出。今年のチームが立ち上がった際は、選手が全国大会への出場を目標に掲げたという。教え子たちの覚悟を感じたため、指揮官はこれまでの強化を変更。長期休みには県外遠征に出向き、全国区の強豪との練習試合を行うことで「本物を見せた」(山崎監督)。そうした取り組みによって、チームに確かな手応えを持って挑んだのが今大会だった。 劇的な勝利を掴み、試合後にはスタンドとともに喜びを露にする選手、嬉し涙を流す選手も見られたが、指揮官は「大会が終わったわけではない。何も決まっていないぞ」と声をかけ、選手の気を引き締めた。決勝進出が四日市工のゴールではない。虎視眈々と本気で選手権出場を狙っている。 (取材・文 森田将義)