少子化の波に逆らえず、急激な為替変動も追い打ち…児童用3輪車メーカー倒産の顛末
エム・アンド・エムは1986年(昭61)3月に設立。幼児・児童用の3輪車や自転車、玩具などを扱っていた。特に幼児に人気の定番アニメキャラクターを用いた3輪車が主力で、中国などの協力会社で製造した商品を輸入し、玩具量販店やベビー用品専門店などに販路を構築し、2008年8月期には年間売上高約18億2700万円を計上していた。また、10年には3輪車オリジナルブランド「iimo」を立ち上げ、海外にも販売網を築いていた。 しかし、少子化による市場縮小の波には逆らえなかったうえ、子供用乗物の多様化に苦しんだ。ペダルが無い自転車形状のキックバイクや成長に合わせてカスタマイズできる乗物などが登場。競争が激化し、年商規模は10億円を下回る水準にまで減少し、キャラクター使用料も重荷となり収益性が悪化していた。 コロナ禍では販売店の営業活動が抑制され売り上げが一層減少。22年8月期には年間売上高約6億9700万円に対し営業損益段階から欠損を計上していた。特に同期決算で目を引いたのは売上総利益率だった。それまで30%を上回る水準が続いていたが、22・1%にまで低迷。その背景には急激な為替変動があり、年間平均で20円以上も円安に振れたことで、仕入れコストが急激に上昇したのである。 22年11月には取引金融機関に対して借入金の返済猶予を要請。大阪府中小企業活性化協議会の支援の下で財務デューデリジェンスを実施した結果、関係会社との架空取引による売り上げの過大計上や、虚偽の為替レートを用いた利益のかさ増しなどが発覚し、約5億円の債務超過に転落していた。 23年以降も円安が急速に進行したことで、策定した経営計画の損益を下回る状況が続く。所有不動産の売却により有利子負債を圧縮するなど経営改善に努め、事業売却を模索していたもののまとまることはなく、同年6月25日に事業継続を断念した。(帝国データバンク情報統括部)