【野球浪漫2024】ロッテ・佐藤都志也 強打の捕手、飛躍中「ボールの見極めができるようになった。やるべきことはできています」
「打てる捕手」として期待される佐藤都志也が勝負の5年目を迎えている。広角に鋭い打球を打ち分けるロッテの頼れる扇の要が、さらなる飛躍を遂げる。 文=竹内夏紀(報知新聞) 写真=桜井ひとし 【選手データ】佐藤都志也 プロフィール・通算成績・試合速報
待望の開幕スタメン捕手
2024年3月29日、本拠地ZOZOマリンスタジアムで行われた今季の日本ハムとの開幕戦。待望の瞬間が訪れた。 「八番・キャッチャー・佐藤!」 22年の開幕戦には「五番・一塁」で先発出場していたが、「開幕スタメンにキャッチャーとして出たいという気持ちを、プロに入ったときからずっと持っていました」。念願だった開幕スタメンマスクの座を、大卒5年目にしてつかんだ。 5回に回ってきた第2打席には日本ハム先発・伊藤大海のスプリットをとらえると右前に運び、今季初安打をマーク。ゆっくりとオーバーランすると、右手をライトスタンドに高々と挙げ、マリーンズファンの声援に応えた。 さらには4点ビハインドの6回二死一塁。一塁走者・水野達稀がスタートを切ると、外角に構える佐藤とは逆のインコース低めのフォークとなったが、素早く握り替え、矢のような送球で盗塁を阻止。開幕戦を1対4で落としたが、佐藤が投打で存在感を見せた。
開幕直前には不安もあった。3月15日のオリックスとのオープン戦(同)の試合中、守備で投球を受けた際に右手親指の付け根付近を骨挫傷した。「試合中にボールが手に当たってしまった。最初のCT画像でヒビが入っていた。『ダメかな』と思った」と、当初は開幕に間に合わない可能性も頭をよぎった。 だが、翌日の精密検査で一転し、「MRIを撮って『大丈夫ですね』と言われた瞬間、痛くなくなってきた。心の持ちようですね」と笑顔。3月22日の中日とのオープン戦(バンテリン)で実戦にも復帰すると、開幕直前も痛み自体は残っていたが、プレーに支障がないレベルまでに回復した。 打てる捕手として注目されてきた。福島・聖光学院高時代は2014、15年と2年連続で夏の甲子園に出場し、最後の夏は初戦でエース左腕・小笠原慎之介(現中日)を擁する東海大相模高と激突して敗れた。同高恒例の「不眠合宿」など、3年間でタフな精神力を鍛え上げられ、3年時にはプロ志望届も提出した。事前に複数球団から調査書が届いていたが、15年秋のドラフト会議で名前を呼ばれることはなかった。一時は地元の大学への進学を検討していたが、「指名漏れの経験から4年後、絶対にプロに入るという気持ちを持って東洋大に来た」と、最終的には熱心な勧誘を受けていた東洋大への進学を決断した。 遠投120メートルの強肩と50メートル5秒9の俊足。主に一塁手だった2年春には打率.483で首位打者に輝くなど、東都大学リーグで通算打率.325、8本塁打を放った。3年時には正捕手として、1学年先輩の上茶谷大河(現DeNA)、甲斐野央(現西武)、梅津晃大(現中日)や1学年後輩の村上頌樹(現阪神)らをリードした。 「(大学では)毎年違った経験をして密度の濃い4年間だった」 捕手&一塁に加え、「自分は負けず嫌いで、どのポジションでも一番になりたい」と、外野手もこなすなど複数ポジションを守れるユーティリティー性も備えており、3、4年時には大学日本代表に選出された。3年時に選出された大学ジャパンの同学年には、明大・森下暢仁(現広島)、東北福祉大・津森宥紀、東海大・海野隆司(いずれも現ソフトバンク)らがおり、現在もプロで活躍するメンバーとしのぎを削るなど充実した4年間を過ごした。 19年秋のドラフトで1位の佐々木朗希に次いで強打の捕手として期待され、2位でロッテに入団した。直後に行われた会見では「素直にうれしく思いますし、小さいころからの夢を叶えることができ、喜びと不安が入り交じっていますが、ここから本当の勝負。これから頑張っていきたい。最終的には球界を代表する選手になりたい」と決意を込めた。 くしくもこの日、10月17日は母・まり子さんの52歳の誕生日。最高の孝行息子は「母が誕生日なので、いい誕生日プレゼントを渡すことができたのかなと思います」とはにかんだ。