プレミア12・侍ジャパン完封負けの理由は「打てなかった」だけでなく…牧秀悟や桑原将志たちが感じた台湾代表の「本当の強み」とは?
桑原が感じていた台湾の強みとは?
もう一つ、興味深い点を口にしたのは台湾との2試合に1番打者としてフル出場した桑原だ。 「自分たちが打線となって戦うことができなかった。僕も個人的に打てなかったのでそれは力不足だと思います。でも僕が台湾に一番勢いを感じたのは守備の部分なんです。台湾は守備で雑なところが全くなかったし、要所で本当にいいプレーをしていた。僕は個人的にベンチでそういう守備を見ながら、嫌な流れだな、これで流れが台湾に行ったかなという思いで見ていたんです」
守備から流れを掴む
例えば日本の4回の攻撃。2死一塁で牧が放った一、二塁間への当たりに対して、台湾のセカンドは守備シフトの逆を突かれながらも飛びついて捕球し、素早い一塁送球でアウトにしている。その直後の5回、台湾は先頭の林家正(リン・ジャーチェン)が先制ソロ。さらに陳傑憲(チェン・ジェシェン)が右翼席に3ランホームランを放ち一挙に4点を奪った。所属のDeNAでは、ソフトバンクとの日本シリーズで勝負の流れを大きく変える守備の好プレーを連発した桑原だけに、余計に敏感に感じた「守備から流れを掴む大切さ」だったのだろう。 台湾の守備について、金子コーチはこんな見方を示している。
大会前から話題だった台湾の守り
「大会前から守備の良さというのは話題になっていました。僕は台北ドームで台湾の練習を見ている時に凄く驚いたんですよ。今までになかったスタイルの選手でチーム編成をしているな、って。 現代野球に必要なパワーとスピードを兼ね備えた選手が多くて、特に印象的だったのは脚の強さでした。学校の体力テストでいえば垂直跳びとか、反復横跳びに長けているような、運動能力の高い選手ばかり。脚が強い選手は球際が強いし、体勢が崩れても立て直すことができる。野球の伸び代が多いかどうかは、特に守備に表れるので」
体の強さ+日本に学んだ技術
台湾代表の選手たちには、今後さらに成長できるだけの伸び代がある。張奕のように10代の有望選手が日本の学校に留学したり、台湾プロ野球が日本のコーチを招くなど、台湾は日本の野球に学んで技術を身につけ、時に日本野球を凌駕するような実力を蓄えてきているのだ。 「台湾の選手たちが持つポテンシャルは凄い。チームとして力を発揮する戦術や、それを発揮できる精神力、あとは野球振興を後押しする国力というものも感じました。今回の台湾や、敗退はしたけれど韓国の選手たちの体の強さ、体の使い方というものは、日本の選手たちにとっても見習うところが沢山あると思います」と金子ヘッドコーチ。 台湾の初優勝は決して“フロック”ではない。2026年3月に行われるWBCまであと1年と4カ月。世界一連覇を狙う大会は、大谷翔平(ドジャース)らメジャー組も出場できる見通しだが、だからと言って決して油断はできない。成長し続けるアジアの新たなライバルから学ぶべきことは多い。
(「侍ジャパンPRESS」佐藤春佳 = 文)
【関連記事】
- 【現場特写】「大喜びの人気者・台湾チアの皆さん」「井端さん、泣かないでくれ…!」プレミア12、悲喜こもごもの熱闘の現場写真を全部見る
- 【プレミア12特集】「あのサイコロの正体は?」「チアはまさかの自腹来日」プレミア12台湾代表の対日本“前哨戦”の謎に迫る…32年ぶり主要国際大会決勝への秘策は?
- 【プレミア12特集】3時間前に台湾が突然、先発変更…侍ジャパンが“消化試合”で絶対に勝ちたかったワケ「明日の決勝のために」《プレミア12史上初の全勝優勝へ》
- 【プレミア12特集】牧秀悟の“劇的満塁弾”を呼び込んだ辰己涼介の打席「神は降りてきてないな…とにかく牧につなぐと思って」《侍ジャパン逆転劇の舞台裏》
- 【プレミア12特集】「本来4番を打てる打者ですけど」侍ジャパン井端弘和監督が牧秀悟を6番で起用するワケ…プレミア12“連覇のキーマン”に挙げた佐野恵太の役割とは