「青春18きっぷ」改定で「鉄道旅」はすたれゆくのか 鉄道ファンの悲鳴に専門家は「ビジネスモデルの限界」を指摘
■自動改札機対応のために JR6社によると、今回の改定は、自動改札機対応にしたことが大きいという。 青春18きっぷの利用客は大都市圏の在住者が多い。これまでは青春18きっぷを使用する際に有人改札で駅名と日付の入ったスタンプを押してもらう必要があり、混雑の原因にもなってきた。青春18きっぷの利用客からも自動改札機対応への要望が上がっていた。 だが、自動改札のシステム上、複数人利用や利用回数の判別ができないため、「1人の連続使用」に限る。グループでの利用が減少傾向にあることも自動改札機対応に踏み切った理由だという。 合理的だが、「利用者に使いづらくなったととらえられても仕方ない」と、小林さんは考える。 「自動改札機対応にするならば、1日券を5枚セット販売するとか、別なやり方はあったはず。諸般の事情もあるでしょうし、金券ショップでのばら売りを防ぐという思惑もあったとは思います」(小林さん) ■位置づけが変わった 鳥取県の若桜(わかさ)鉄道の元社長で、日本鉄道マーケティングの山田和昭代表は、「JR各社の並々ならぬ決断があった」としたうえで、こう指摘する。 「青春18きっぷの位置づけが、新規顧客の獲得から変わってきた」(山田さん、以下同) 青春18きっぷはJRグループ6社の共同商品だ。きっぷの内容を変更するには各社間の調整が必須となる。さらに、全国すべての自動改札に対応するためにシステム改修を行わなければならない。 「新たな投資が必要になるし、従来の利用者からの反発も承知しているでしょう。それでも改定せざるを得ない背景があったはずです」 ■「青春18きっぷ」はスーパーの特売品 青春18きっぷという「安いきっぷ」があれば、「定価のきっぷ」が買われる機会は減る。それでも発売してきたのは、「5日間のきっぷをまとめ買いしてもらうことで安くできた」ことのほかに、「顧客獲得に費やしたコストを長期間にわたって回収するビジネスモデルがあったから」だという。 山田さんは青春18きっぷの役割を「スーパーの特売品」にたとえる。 「スーパーは厳しく原価管理を行い、安い『特売』で新規顧客を引き寄せている。新規顧客がなじみの客になってくれれば、元がとれるからです。顧客は歳をとったり、他の店に移ったりして減っていくので、新規顧客の獲得は常に必要です」