“車に興味ない遺族”は旧車をどうすべき? “おじいちゃんのクラウン”を受け継ぐ孫の葛藤
■重圧を和らげたSNSからの応援「今は維持したいが、今後はその都度考えていきたい」
祖父の他界後、りかさんは一度、自らがクラウンを乗り継ぐことを決意。妊娠9ヵ月ながら、AT限定解除のため教習所に通い、MT免許を取得する。 「おじいちゃんが亡くなった時は、悲しみでいっぱいで、もうこのまま車も動かさずに終わるのかなと思っていました。でも入院前に、おじいちゃんと一緒にクラウンを車検に出しに行ったときの様子を綴った動画が1万再生、2万再生とぐんぐん増えて。おじいちゃんに『こんなにも見てくれている人がいるんだから車のこと頼んだぞ』って背中を押されている気がして、ちょっと頑張ってみようかなって」(りかさん) その後出産・育児と忙しい毎日を送る中、クラウンに関われない自分を責める思いが、冒頭のXでのつぶやきにつながった。 長い伝統を誇る物は継承が美徳とされるもの。それが血縁の思いや家族の思い出を乗せたものであればなおさらだ。しかし旧車となれば、保管場所に加え、お金、知識、さらにそれに割く手間も必要。貴重なものとはいえ、維持していくことは決して簡単なことではない。とかく昨今“旧車ブーム”も相まって、一部の車好きは、その人が置かれている状況も考えずに、「貴重な車は継承して残すべき」や「家族の想いを受け継ぐべき」という声を上げがちになるが、そんな“旧車ファースト”な考え方は、車に興味のない残された家族からすれば重荷にしかならない。当然ながら、車を媒介しなくとも、その想い出は残された家族とともにある。 りかさんにも、そんな見えないプレッシャーがあったのだろう。だが、それを救ったのは、SNSに寄せられた2万を超えるコメントだった。 「『りかさんの負担にならない程度に』という私のことを気遣ってくれるたくさんのコメントに力をもらいました。その一方で、『りかさんの負担になるんだったら、手放すとか違う方法を考えてみてもいいんじゃないか』というコメントや『りかさんがつらい思いをしてまで維持していても、多分、おじいさまは喜びませんよ』というコメントもいただいて、いろいろ考えるきっかけになりました。確かに、私の子どもに大変な思いをしてまで継承してほしいかといえば、それは違うなと思いますからね」(りかさん) 寄せられたエールは、「受け継いだからには守らなければいけない」「応援してくれる皆さんのために頑張らなければいけない」といった重圧を和らげてくれた。 「たしかにお金の面など大変なことはたくさんありますが、今現在、私は手放すことの方がつらいので、維持したいと考えています。ただ、今後のことはその都度、考えていきたいと思っています。これまでもみなさんのコメントによって、思ってもいない力が湧いてくることや、迷いに対してのアイデアが生まれて、プラスの方向に持っていけることを経験してきました。今後も気負わず、『何かあったらSNSを使ってみなさんに聞こう。みなさんに頼ろう』という気持ちで、動画の投稿も車の維持も、柔軟に考えていきたいと思います」(りかさん) 取材・文/河上いつ子