仏大統領、下院解散総選挙を発表 欧州議会選で極右に大敗
欧州議会選挙でフランス与党勢力が極右政党に大敗したことで、フランスのマクロン大統領が急きょ国民議会(下院、定数577)の解散総選挙を決めた。これを受け、EU懐疑派で反移民を掲げるマリーヌ・ルペン氏率いる「国民連合(RN)」など、極右政党の出方が注目されている。RNが政権を獲得するかどうかは定かでなく、主要政党による幅広い連立や、完全なハングパーラメント(宙づり議会)というシナリオもある。6月30日に第1回投票、7月7日に決選投票が実施される。 9日、フランス下院の解散総選挙を発表したマクロン大統領。第2次大戦中に、ナチによる虐殺があった村の跡地を訪れ、ドイツのシュタインマイヤー大統領と、両国の和解に向け努力を続けると宣言した。 マクロン仏大統領 「大戦を経験した世代には勇気があった。孫の世代にも、同じ勇気と同じ決意が必要だ」 これに先立つ欧州議会選では、フランス与党勢力が極右政党に大敗。マクロン大統領は急きょ、国民議会(下院)の解散総選挙を決定した。マクロン氏の政治的将来を左右するものであり、極右勢力が国内政策の決定権を握る可能性もある。 マクロン氏は、2年前議会で絶対多数を失い、影響力が低下。同氏の関係者は、サプライズとも言える総選挙に踏み切ることで、議会で過半数を回復できる計算があると述べた。 ただ、ルペン氏率いる極右政党「国民連合(RN)」が過半数を取れば、政権運営が3年間、機能不全となり、2027年大統領選への逆風となる、「賭け」だとの見方も出ている。 情報筋によると、その選択肢にはリスクもある。 選挙ではマクロン氏の権力スタイルや、生活費、移民政策に対する不満が焦点になる見通し。国民連合の国政運営力も問題となるだろう。 国民連合のアリオ副党首はこう話す。 「準備はできている。総選挙で、私たち国民連合もしくは他党との連立が多数派となれば、私たちはフランスをすぐに再び動かすことができるだろう」 国の債務水準はすでに高いが、国民連合は多額の公共支出を提案。移民の国外追放や育児手当の仏国民への限定、公営住宅や雇用で仏国民を優先することを目指している。 国民連合が最終的に十分な議席を確保できるかは不明だ。主要政党による幅広い連立や、ハングパーラメント(宙づり議会)というシナリオもある。 国民連合が過半数を獲得しても、マクロン氏は3年間大統領にとどまり、国防・外交政策を担う。ただ、経済や財政など国政の決定権は失うことになる。 各政党に残された時間は短い。6月30日に第1回投票、7月7日に決選投票が実施され、次期政権は7月に発足する。