山下智久主演『正直不動産2』続編なのにさらに面白くなりそうな5つの理由。若者向けでない人情喜劇に心が温まる
◆粒ぞろいの出演陣 山崎はTBS『クロサギ』(2006年)で山下と共演し、気に入ったと伝えられた。だが、芸能界では社交辞令で終わるのが普通。山崎は違い、ほかの作品には滅多に出演しないものの、この作品には出る。山崎自身の凄さは自分の加齢に応じた演技をするところ。若いころの自分をいつまでも追おうとしない。 仇役の神木に扮するディーン・フジオカ(43)はほかの作品では主演級だから、安定感がある。神木はしょっちゅうタップダンスを踊っているが、この演技は結構難しい。一歩間違えたらギャグだ。あるいは悪目立ちしてしまう。そうならないのはディーンがうまいからである。 登坂不動産の社長・登坂寿郎役の草刈正雄(71)も名優だが、その演技が見られるのはNHKの作品くらい。民放の作品は2020年4月の個人視聴率導入により、大半が若者向けになったからだ。この作品は草刈の演技が見られるだけでも貴重だ。 典型的な2枚目俳優からシブイ俳優に転向して久しい。背景には日本テレビ『プロハンター』(1981年)でダブル主演した藤竜也(82)の影響があると見る。 福原は連続テレビ小説『舞いあがれ!』(2022年度下半期)でヒロインを経験したが、月下役が一番ハマっているのではないか。真面目で一生懸命だが、ビックリするほど酒癖が悪く、どこか抜けている。キャスティングのセンスが光る。
◆母を思う子どもの心に胸を打たれた 第3に人情喜劇であるところがいい。映画『男はつらいよ』(1969~95年)や故・向田邦子さんが脚本を書いたTBS『寺内貫太郎一家』(1974年)など日本人は人情喜劇が大好きだが、近年はめっきり減った。これも民放作品の大半が若者向けになったことが大きい。その点でもこの作品は貴重だ。 初回では開業医の田口篤司(戸次重幸)が永瀬にタワーマンションの購入を求める。「タワマンの住民になりたい」という見栄からである。 永瀬は結局、田口を神木に横取りされるのだが、それでも田口に会い、タワマン購入を止めるように説得する。田口の妻・友梨佳(土村芳)には2年前の交通事故の後遺症があり、右足がやや不自由であることを知ったからである。正直営業の本領発揮だった。 「田口さん、あなたが守るべきことは虚栄心などではなく、ご家族ではないですか」(永瀬) 友梨佳の後遺症を永瀬に教えてくれたのは6歳の1人息子・櫂(佐藤遙灯)。田口がタワマン購入を前に浮かれているとき、櫂はずっと心配そうな目をしていた。母親に辛い思いをさせたくなかったのだ。永瀬の誠実さも良かったが、母を思う子どもの心に胸を打たれた。 田口はもちろんタワマンを買わず、神木から低層階マンションを購入する。それでも田口が感謝したのは永瀬である。周囲から「不動産営業マンを紹介してくれ」と頼まれると、迷わず永瀬を紹介した。やはり日本人が好む正直者が報われる物語になった。