クマ襲撃事故、昨年は「9月以降」に急増…「命に別条なし」と報じられても、背景にある“深刻な”被害実情とは
クマ対策で一番大事な「備え」
羽根田さん自身も山歩きする機会が多く、これまでに2度、ヤブの中でクマを確認したことがある。幸いどちらも距離が離れていて鉢合わせることはなく、クマのほうから遠ざかっていったというが、こうした経験も踏まえて次のようにアドバイスする。 「クマが生息していない九州や沖縄は別ですが、基本的にアウトドア活動をする以上はクマに遭遇するリスクはあるものと思い、備えることが大切です。 まず山に入る前には、自治体や観光協会、ビジターセンターなどで最新のクマ目撃情報をチェックするようにしてください。最近ではクマの出没情報があると、自治体などが入山禁止措置をとることも多くなってきているようです。 山では、クマ鈴をつけたりラジオを流すなどして自分たち人間の存在を早めに知らせ、向こうから遠ざかってくれるようにするのが基本的な対策になります。見通しの悪いところではホイッスルを吹くのもいいでしょう。 またフンや足跡、木につけられた爪痕、クマ棚(クマが木に登って果実などを食べる際に木の枝を折って作る腰掛け用の棚)などの痕跡があれば、クマが近くにいると考えて、なるべく早くその場から遠ざかるようにしてください」 さらに、クマの習性のひとつである「獲物に対する執着心の強さ」にも注意が必要だ。 「キャンプなどで一度クマに荒らされた(クマが“獲物”と認識した)食べ物を奪い返してしまうと、逆上して襲ってくるリスクが高まります」(羽根田さん) 事例としては、1970年に北海道・日高山脈で発生した福岡大学ワンダーフォーゲル同好会の事故が有名だ。学生らは縦走のため幕営中、ヒグマに荷物をあさられたが、追い払って取り返したことがきっかけとなり襲撃され、5人中3人が亡くなった。 「一般的なキャンプ場であっても、食べ残しやゴミを放置しない、食料はフードコンテナに保管するなどの対策をしたほうがいいでしょう。また最近では、食糧庫(フードロッカー)を設置するキャンプ場も出てきているようです」(同前)