英看護師の死亡にダイエット注射が関係 報道
【AFP=時事】英BBCは8日、看護師のスーザン・マクゴーワンさん(58)の死に体重減少効果を狙った新薬の注射が関わっていると報じた。こうしたダイエット注射をめぐっては、医療の逼迫(ひっぱく)に直面している国民保健サービス(NHS)の負担を軽減する手段として政府が評価を予定している。 「皮膚に穴」も…米オピオイド問題、動物用鎮静剤併用で深刻化 BBCによれば、マクゴーワンさんの死は、商品名「マンジャロ」で知られるチルゼパチドが英国で初めて公式に死亡と関連付けられた事例とみられる。 BBCが確認したとしているマクゴーワンさんの死亡診断書には、直接の死因として多臓器不全、敗血性ショック、膵(すい)炎が挙げられているほか、寄与要因として「処方されたチルゼパチドの使用」が記されていた。 マクゴーワンさんは認可を受けたオンライン薬局でチルゼパチドを処方されたが、2回目の注射の後、激しい腹痛と吐き気に見舞われた。スコットランド・ノースラナークシャーにある勤務先の病院で治療を受けたが、助からなかったという。 だが、専門家は、マクゴーワンさんの死をチルゼパチドと直接結び付けることについて警告している。チルゼパチドをめぐっては現在、規制当局の承認を得るために広範囲にわたる治験が行われている。 グラスゴー大学のナビード・サッタール教授(心代謝性疾患)は「大勢の人がこのような薬の恩恵を受けている。今回の個別事例は残念だが、それだけで既に存在する膨大(ぼうだい)な実証を覆すことはできない」と指摘。 「もちろん、引き続き注意は必要だ。当局も引き続き、可能な限りすべての実証を得る試みを続けるだろう」と補足した。 英政府は先月、米製薬大手イーライリリーによる2億7900万ポンド(550億円)の投資を発表したが、これには同社の医薬品、マンジャロに関する5年間の治験も含まれている。 治験は肥満症患者や無職の人を含む最大3000人を対象に実施される。 ウェス・ストリーティング保健・社会福祉担当相は、数百万人もの英国人が該当する肥満症関連の症状により、国民の傷病休暇が4日増え、NHSには大きな負荷がかかっていると指摘した。 政府のデータによると、英国成人の肥満率は2015~16年には22.6%だったが、22~23年には26.2%に増加している。 世界保健機関(WHO)が22年に公表した報告書によれば、英国の肥満率は、マルタに次ぐ欧州2位となっている。 キア・スターマー首相は、体重減少に有用な薬が人々の職場復帰に重要な役割を果たす可能性があると主張している。 公衆衛生に関する諮問機関はマンジャロについて、NHSによる段階的な導入を推奨しており、計画案によれば3年間で25万人の利用が見込まれている。【翻訳編集】 AFPBB News