「1センチでも広く土地を持ちたい」 遊牧民は鉄条網で土地を囲い始めた
日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。その北に面し、同じモンゴル民族でつくるモンゴル国が独立国家であるのに対し、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれ、近年目覚しい経済発展を遂げています。しかし、その一方で、遊牧民としての生活や独自の文化、風土が失われてきているといいます。 内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録しようとシャッターを切り続けています。内モンゴルはどんなところで、どんな変化が起こっているのか。 アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。 ----------
遊牧社会において、遊牧することは一番重要なことだ。それが遊牧生活、文化、モンゴル人自身のアイディンティティ成り立ちの基礎になっている。 彼らが一年中、何回も遊牧する最大の目的は、家畜が一箇所の草を食べ尽くすことを避けるためだ。豊かな牧草地を守り、自然と人間の調和を大事にしてきた。 内モンゴルの取材中、たくさんの遊牧民の家に泊めてもらい、撮影を行ってきた。 多くの家が、完全に鉄条網に囲まれていた。50メートル先の隣人の家に行くたびに、鉄条網をくぐらなければいけない。土地を持つことにあまり執着心がなかった遊牧民が、1センチでも広く土地を持ちたい、となったことが悲しくなる。 私が子どもの時は鉄条網はあまりなく、子どもたちも家畜も、勝手に自由に走り回っていた。(つづく) ※この記事はTHE PAGEの写真家・アラタンホヤガさんの「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮るーアラタンホヤガ第4回」の一部を抜粋しました。
---------- アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA) 1977年 内モンゴル生まれ 2001年 来日 2013年 日本写真芸術専門学校卒業 国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。 主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。