ベッド編(3)捻転の動きを利用すれば簡単に寝返りさせられる【誰でもできる力いらずの介助術】
長期間、ベッド上での安静が必要な人で気を付けたいのが「褥瘡=床ずれ」だ。 寝たきりなど長時間同じ姿勢で横になっていると体の一部に圧力がかかり続け、その部分の皮膚に十分な血液が行き渡らず傷になりやすい。 とりわけ骨が出っ張っているお尻の仙骨部や太ももの付け根にある大転子部、かかとは圧迫を受けやすいため、定期的に体位を変える必要がある。 力がいらない根津式介護技術を開発した根津良幸氏が言う。 「人間の筋肉は、『屈』『伸』『捻転』という3つの動きしか行えません。体に不自由があり介助を必要とする人の中には、屈伸の動作ができない人も少なくない。ですが、筋力が低下して筋肉が痩せ細ったとしても弾力性は残っているので、捻転の動作は維持されます。その動きを利用すれば、力いらずの寝返り介助が行えるのです」
体位を変えて床ずれを防ぐ
基本的な寝返りの方法を紹介する。 ①介助者はベッドの横で相手に向かって立ち、枕側に近い足の膝を相手の胸の位置につく。 ②相手の両手首を、親指、中指、薬指で輪をつくって取り、相手の両腕を弧を描くように肩の高さまで引き上げてから、そのまま相手の両腕を交差して胸の前で組ませる。 ③介助者は相手の膝の位置に移動し、先ほどと同側の足の膝をつき直す。 ④ついた膝と同側の中指と薬指を曲げて相手の膝下に差し入れ、片足ずつ膝を曲げて立てる。 ⑤相手の胸の位置に移動して先ほどと同側の膝をつき直し、ついた膝と同側の手を相手の肩の下に差し入れ、中指と薬指で軽く触れる(写真1)。 ⑥空いている方の手で相手の奥側の膝に触れ、膝を手前に引いて倒す。 ⑦肩下に差し入れた手を同様に手前に引いて相手の肩を起こしたら、介助者はベッドから膝を下ろし、相手の肩と骨盤を押さえて姿勢を安定させる。 「相手を奥向きに寝返りさせる場合には、④まで同様に行います。次に、介助者は枕側に近い方の手を相手の手前の肩の下に差し入れます。(写真2)⑤空いている方の手の中指と薬指で、相手の手前側の膝に触れ、膝を奥へ倒します。下半身が倒れれば、自然と上半身もねじれる動きをするので、その力を利用して⑥肩を奥へ押すと、誰でも簡単に寝返りさせられるのです」 (つづく)