福永師“金の卵”たちと築く常勝軍団
日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は大阪本社・栗林幸太郎(41)が担当する。3月に開業した福永祐一師(48=写真)は8月のCBC賞で重賞初制覇を飾るなど17勝をマーク。調教師としての“1年目”を振り返る。 一流ジョッキーから名トレーナーへ。3月に開業した福永師のデビューイヤーが終わろうとしている。「しっかり自分たちがやることをやって、結果がついてくることを信じてやってきた。重賞を勝てるように仕上げることができたのは厩舎としても自信になります」と手応えを口にした。 8月のCBC賞をドロップオブライトで勝ち、重賞初制覇。今年開業した調教師の中ではトップとなる17勝を挙げた。「おおむね、うまく運営できたかな。キャリアのあるスタッフが来てくれて自分の経験のなさを補ってくれた」と感謝。試行錯誤していく中で、恐れずに挑戦。失敗することもあるが、その経験が糧となり、今後の財産になっていく。「丁寧な管理を心がけ、いい状態で走れるようにする。そこが目標。(成績面で)高い数字を目指していきたい」と見据えた。 師自らが稽古をつけ、それぞれの馬に合ったメニューをつくる。徹底した管理で、細かい体調の変化も見落とさない。「3歳馬は春に格上挑戦を積極的にしようと思う。可能性のある馬は使っていきたい」と起用方法を明かす。常識にとらわれないレース選択で素質を開花させていく構えだ。 厩舎期待の2歳馬ランフォーヴァウ(牝)は5月の千葉サラブレッドセールで自ら選んで育て上げ、デイリー杯2歳Sで厩舎2度目の重賞制覇を飾った。来年は現2歳世代やデビューを控える金の卵たちに目を向ける。「来年から現1歳世代が中心になっていくかな。2歳馬も頑張っているけど、今の1歳世代もいいから」と期待を寄せている。 早期特例登録馬の1歳サガルマータ(牡)は師が騎手時代に主戦を務めたコントレイルの初年度産駒で、昨年のセレクトセールで5億2000万円(税抜き)で取引された。もう1頭のコントレイル産駒クールマイユール(牡)など他にも、この世代は逸材ぞろい。1年目に築いた礎をもとに、2年目からさらに自身の色に染めていく。手塩にかけた若駒たちを中心に、着々と常勝軍団を築いていくだろう。2年目の福永厩舎からも目が離せない。 ◇福永 祐一(ふくなが・ゆういち)1976年(昭51)12月9日生まれ、滋賀県栗東市出身の48歳。父は福永洋一元騎手。96年に栗東・北橋修二厩舎所属でデビュー。99年桜花賞(プリモディーネ)でG1初制覇。日本ダービーは18年ワグネリアン、20年コントレイル、21年シャフリヤールで制した。22年12月調教師免許試験に合格、23年2月に騎手引退。JRA通算1万9497戦2636勝(G1・34勝)。今年3月に厩舎を開業し、4月7日福島8Rマルカブリッツで初勝利を挙げた。調教師成績は149戦17勝(重賞2勝)。