豊洲地下水から基準79倍のベンゼン 専門家会議も「困惑」 急激に数値上昇
豊洲市場で土壌汚染対策の盛り土が行われなかった問題で、安全性などを検証する専門家会議の4回目の会合が14日、築地市場で開かれた。豊洲への築地市場移転を判断する大きな要素となる第9回の地下水モニタリング調査結果が公表され、環境基準値の79倍という高い濃度のベンゼンや、これまで不検出だったシアンがはじめて検出された地点があった。今回の調査で急激に数値が上がっている地点が多く、調査結果や今後の推移を検証するための再調査を行うとした。
再調査の結果は3月以降に報告へ
基準値を超えるベンゼンが検出されたのは35地点あり、基準値の79倍の濃度が検出された地点を含め、6地点では基準値の10倍を超えていた。シアンは不検出が基準値であり、これまでの調査では全地点で不検出だったが、今回は39地点で検出された。ヒ素も20地点で基準値を超える濃度が検出された。第8回の調査までは環境基準以下の数値でなだらかに推移する傾向だったが、今回の調査で急激に数値が上昇している地点が目立った。東京都は試料の採取方法などを確認中で今回のデータは暫定値としている。 平田健正座長(放送大学和歌山学習センター所長)は「あまりにも今までの傾向と違っている。とても驚いている」と話すなど、各委員も調査結果に困惑。駒井武氏(東北大学大学院環境科学研究科教授)は、昨年10月から本格稼働した地下水管理システムの影響を指摘。中島誠氏(国際航業フェロー)は採水時に混入した土による影響の可能性を挙げた。 ただ今回のデータだけでは評価が難しく、今後もこうした傾向が継続されるのか推移をみる必要があるとして、平田座長は「なぜ急激に濃度が上がるのか検証していくべき」と述べた。再調査は代表的な地点で実施し、専門家会議メンバー立ち会いのもとで採水し、分析は東京都環境科学研究所および民間分析会社2社で行う。 会議を傍聴していた築地市場協会の伊藤裕康会長は「学者の立場で冷静にみて、正確な判断をお願いしたい」と要請。仲卸業者の山崎康弘さんは「都は信用できない。(豊洲)移転後にこの数字が出なくて本当によかった」と不信感をあらわに。「『安心』がない限り移転してはいけないと思っている。ここまでやったから『豊洲は安全です』と言えるように腹をくくってやってほしい」と都に求めた。