【窓・壁リフォームの落とし穴】「一部の窓だけ二重窓にしたら寒いまま」「断熱材を入れたらカビだらけに」…知っておきたい断熱リフォームの失敗例
老朽化が進み、バリアフリーにも対応していない我が家。それでも、慣れ親しんだ自宅で最後まで暮らしたい──そんな願いを叶える方法がリフォームだが、その道には多くの落とし穴が潜んでいる。多額の費用をかけたにも関わらず、逆に生活しにくくなるケースも少なくないという。改築の専門家たちが、窓や壁をリフォームする際に避けるべきポイントを指南する。 【写真】窓・壁リフォームの落とし穴について解説した平松明展氏、尾間紫氏
リビングの一番大きな窓を二重窓にしたけれど…
年齢を重ねるごとに大敵となる寒暖差。自宅の断熱性能を向上させるために窓や壁のリフォームをする人は多いが、ここにも落とし穴が潜む。 二重窓もそのひとつだ。窓の内側にもう1つ窓を取り付けることで窓と窓の間に12ミリ程度の空気層を作り、熱の伝導を防ぐ。省エネ化のために二重窓を設置すると国の補助金を受けられる制度もあり急速に認知度が上がった。 だが、昨年自宅の窓を二重窓にリフォームした栃木県在住のBさん(69)はこう嘆息する。 「リビングの一番大きな窓を二重窓にしたのですが、設置後も寒いままでした。他の窓も二重窓にしたかったのですが、取り付けができない窓があり、そこから冷気が入ってしまうんです……」 一級建築士でリフォーム事情に精通する尾間紫氏が語る 「二重窓にする際は、部屋のすべての窓を替えることが重要です。一部の窓だけ二重窓にすると、未設置の窓から冷気が入ってきて結露も生じやすくなります」 全ての窓を二重窓にするのが難しい人は、リフォームではなく「カーテンの付け替え」が手軽で良いという。 「『ハニカムスクリーン』という蜂の巣状のカーテンがあります。六角形の筒を重ねた構造で窓とカーテンの間に空気層ができ、高い断熱効果が得られます」(同前)
寒暖差対策の「断熱材」で家がカビだらけに
断熱リフォームは窓だけではなく、壁に断熱材を入れる方法もある。 ただし、「間違った方法で断熱材を入れ、かえって不具合が生じる家もある」と指摘するのは、『住まい大全 ずっと快適な家の選び方、つくり方、暮らし方』の著書がある平松建築代表の平松明展氏。 「築年数が古い家の壁に断熱材を入れると『内部結露』が発生してしまうケースがあります。湿気は温度が高いところから低いところへ逃げていきますが、部屋の暖かい空気が外へ抜ける際に壁の断熱材が邪魔して湿気が溜まってしまうことがあるのです」 2000年4月に義務化された「外壁通気工法」により、それ以降の家の外壁には湿気や結露を逃がす通気層の設置が義務化された。対して、築年数の古い家の壁には通気層がなく湿気が抜けにくい造りになっている傾向があるという。 「2000年以前に建てられた家の場合、断熱材によって壁にカビが生えて家を老朽化させてしまうケースが珍しくない。リフォーム費を無駄にしないように、まずは自宅の壁の構造を調べておきましょう」(平松氏) ※週刊ポスト2024年11月22日号