豪議会、16歳未満のSNS利用を禁止する法案可決 1年後に施行へ
オーストラリアは29日、16歳未満の子供たちによるソーシャルメディアの利用を禁止する法案を可決した。世界で最も厳しい法律となる。 この禁止措置が施行されるのは、早くても12カ月後の予定。違反したテクノロジー企業には、最大5000万豪ドル(約48億8300万円)の罰金が科される可能性がある。 アンソニー・アルバニージー首相は、この法律が若者をソーシャルメディアの「害」から守るために必要だという意見で、多くの保護者グループもこれに賛同している。 一方で、この禁止措置がどのように機能するのか、そしてプライバシーや社会的つながりにどのような影響を与えるのかについて、疑問が残るという批判も出ている。 子供のソーシャルメディア使用を制限しようとする取り組みは、世界的にこれが最初ではないが、16歳という対象年齢はどの国が設定したものより高い。また、他国の試みと異なり、既存のユーザーや親の同意を得た場合の例外規定はない。 この法案は28日夜に上院で賛成34票、反対19票で可決された後に下院に戻され、29日午前に可決された。 「私たちは子供たちに子供時代を過ごしてほしいし、親たちには、私たちが支えていることを知ってほしい」と、アルバニージー首相は記者団に語った。 この法律は、どのプラットフォームが禁止されるかを具体的に示していない。こうした決定は通信相によって行われ、オーストラリアのオンライン規制当局である「eセーフティー・コミッショナー」からの助言を求める予定だ。 ミシェル・ローランド通信相は、禁止措置にはスナップチャット、TikTok、フェイスブック、インスタグラム、X(旧ツイッター)が含まれると述べている。一方、ゲームやメッセージプラットフォームは除外されているほか、アカウントなしでアクセスできるサイト、例えばユーチューブは対象外となる見込みだ。 ■年齢確認が課題 政府は、この制限を実施するために何らかの年齢確認技術に頼るとしており、今後数カ月でその試験が行われる予定だ。また、こうしたプロセスを追加する責任はソーシャルメディアのプラットフォーム側にあるとしている。 しかしデジタル研究者たちは、生体認証や身元情報に依拠する可能性のある不特定の技術が、確実に機能する保証はないと警告している。また、プライバシーの保護を求める声もあがっている、 また、VPN(仮想プライベートネットワーク)のようなツールを使用すれば、ユーザーの位置情報を偽装し、他の国からログインしているように見せかけることで、制限を簡単に回避できると警告している。 規制を逃れる方法を見つけた子供たちが罰則を受けることはないとされている。 この改革に関する世論調査は、限定的なものではあるが、オーストラリアの親や保護者の大多数が規制を支持していることが示唆されている。 禁止措置を求めてロビー活動を行っていたエイミー・フリードランダー氏は、「長い間、親たちは子供に中毒性のある端末を与えるか、子供が孤立して疎外感を覚えるのを見守るかという、不可能な選択を迫られてきた」とBBCに語った。 「私たちは誰も望まない規範に閉じ込められてきた」 しかし、多くの専門家は、この禁止措置がSNS使用に伴うリスクに効果的に対処するには「手段として粗すぎる」と指摘しており、子供たちが規制がより緩いインターネットの片隅に追いやられる可能性があると警告している。 ■SNS側は批判 法案が可決されるまでの短い審議中、米グーグルと、スナップチャットを運営するスナップは、法案の詳細が明らかになっていないと批判。フェイスブックやインスタグラムを所有するメタは、この法案には「効果がない」うえ、子供たちをより安全にするという当初の目的を達成しないだろうと述べていた。 TikTokは議会への提出書類の中で、豪政府のソーシャルメディアプラットフォームの定義が「広範かつ不明確」であり、「ほぼすべてのオンラインサービスがその範囲に含まれる可能性がある」と述べた。 Xはこの法案の「合法性」に疑問を呈し、オーストラリアが署名している国際規制や人権条約と両立しない可能性があると述べている。 若者の活動家の一部は、ソーシャルメディアが若者の生活に果たす役割を政府は十分に理解しておらず、議論から自分たちを排除していると非難している。 規制当局に助言する「eセーフティー・ユース・カウンシル」は、「私たちはソーシャルメディアのリスクや悪影響に対して脆弱(ぜいじゃく)であることを理解しているが、解決策の開発には私たちも関与する必要がある」と指摘した。 アルバニージー首相は、この議論が複雑であることを認めつつも、今回の法律を固く擁護している。 「この法律の実施が完璧だとは主張しない。18歳未満の子供に対する飲酒禁止が、18歳未満の誰もがアルコール飲料にアクセスできないことを意味しないのと同じだ。しかし我々は、これが正しいことだと確信している」 フランスでは昨年、親の同意なしに15歳未満の子供がソーシャルメディアにアクセスすることを禁止する法律が導入された。だが調査によると、ユーザーのほぼ半数がVPNを使用してこの禁止を回避できたことが示されている。 アメリカのユタ州では、オーストラリアの法律に似た州法が連邦判事によって違憲とされ、覆された。 オーストラリアの法律は、各国の指導者らから大きな関心を集めている。 ノルウェー政府は最近、オーストラリアに続くことを約束した。 イギリスのテクノロジー担当相も先週、同様の禁止措置を「検討中」だと述べた。だがその後、「現時点ではない」と付け加えた。 (英語記事 Australia approves social media ban on under-16s)
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