大阪・錫製品と漆塗りとのコラボ「錫漆」が話題に ── 伝統的技法で錫と漆の調和
お酒を飲む際に使われる「ぐい呑」など錫器で知られる「大阪錫器」(大阪市東住吉区田辺)がこのほど、新作「錫漆(すずうるし)」の完成披露会を開いた。新製品の錫漆は、国に認定されている伝統工芸品の錫製品と漆塗りとのコラボ商品となっている。同社社長で、大阪浪華錫器伝統工芸士会会長、現代の名工でもある今井達昌さんが製作した錫器をベースに、会津塗、輪島塗、越前塗、紀州漆器の各産地の職人の特長を踏まえ、オリジナリティーにあふれた製品の数々を会場に展示。しかも、今回初めて百貨店などに流通展開が可能な量産に成功した。
1つの製品を完成させるのに1~3か月
「もともと錫に漆をのせる技術はあります。そこで産地の技法でやってみようということで、企画したものです。非常に珍しい伝統工芸品同士のコラボになっています。1つの製品を完成させるまでに、1か月から3か月かかっています」(今井社長) 化学合成されたプライマーなどを使用せず、伝統的技法にのっとった錫と漆の調和は試行錯誤を重ねた結果、ようやく完成し、今回の披露会となったもの。 コラボした輪島塗(輪島塗前伝統工芸士会会長の津田哲司氏)や会津塗(会津塗元伝統工芸士会会長の儀同哲夫氏)の職人は、全国伝統的工芸品展で内閣総理大臣賞を受賞するなど、それぞれの技を極めた重鎮。そんな人たちの挑戦によってまったく新しい作品が生まれたということだ。 「現在はまだ発展段階です。今後、ほかの産地、アイテムを随時発表していく予定ですので、ぜひ注目して下さい」(同)
約1300年前、日本に伝わった錫器
錫器が日本に伝わったのは今から約1300年前。錫は金、銀に並ぶ貴重品であったため、宮中での器や有力神社の神酒徳利など神仏具などで使用されてきた。大阪における錫器造りの起源は1679年(延宝7年)で江戸中期には、心斎橋・天神橋・天王寺など流通の良い大阪で生産されていたという。 後に広く一般にも普及。酒器や茶器といった美しく、かつ使いやすいものが人気を呼んでいるようだ。錫製のタンブラーなどでビールを飲めば、また格別の旨さ。新作のぐい呑みで日本酒を味わうのも、これまた贅沢なひとときと言える。 (文責/フリーライター・北代靖典)