中国の太陽光パネル大手が「軒並み赤字」の泥沼 原価割れの価格競争や過剰生産が止まらず
「太陽光パネル業界はプレーヤーが多すぎ、(極端な価格競争を避けるための)自律的な協調が困難だ。技術と品質の底上げを通じた業界再編を進め、企業の数を適度に減らすべきだ」 【写真】2023年の博鰲(ボーアオ)アジアフォーラムに出席した隆基緑能の鐘宝申・董事長 中国の太陽光パネル大手、隆基緑能科技(ロンジ)の董事長(会長に相当)を務める鐘宝申氏は、10月30日に開催した2024年7~9月期の決算説明会でそう述べた。 鐘氏の発言には、太陽光パネル業界の(赤字覚悟の)値下げ競争や過剰生産が止まらないことへの苦悩がにじんでいる。
■時価総額の7割蒸発 2024年に入って以降、太陽光パネル業界の主要企業は赤字経営の泥沼にはまっている。隆基緑能は7~9月期に約12億6000万元(約271億円)の純損失を計上、1月から9月までの累計純損失は約65億元(約1398億円)に上った。 上海証券取引所に上場する隆基緑能の株価は、10月31日の終値で19.74元(約424円)、時価総額は約1500億元(約3兆2251億円)に落ち込んでいる。3年前の2021年には時価総額が一時5000億元(約10兆7502億円)を超えたが、その約7割が蒸発した格好だ。
隆基緑能だけではない。太陽光パネル関連の上場企業の業績はどこも惨憺たる状況だ。1~9月の累積純損益で比較すると、シリコン原料大手の通威股份(トンウェイ)は40億元(約860億円)近い赤字、シリコンウェハー大手のTCL中環も約60億元(約1290億円)の赤字だった。 太陽光モジュールの大手では、天合光能(トリナ・ソーラー)の1~9月の累積純損益は約8億5000万元(約183億円)の赤字、晶澳太陽能科技(JAソーラー)は同4億8000万元(約103億円)の赤字に沈んだ。
同じ期間に晶科能源(ジンコソーラー)は黒字を確保したものの、純利益は約12億元(約258億円)と前同期比8割以上も減少した。 ■赤字入札に業界団体が苦言 各社の業績悪化の主因は、太陽光パネルの生産能力が需要を大きく上回り、市場価格の値崩れに歯止めがかからないことにある。 TCL中環の7~9月期の決算報告書によれば、8月末以降の市場価格は落ち着きを見せつつあるものの、太陽光パネルの(原材料から完成品に至る)サプライチェーン全体で販売価格が製造原価を割り込んでいるという。
業界団体の中国光伏行業協会は10月18日に発表した声明の中で、現時点の太陽光パネルの製造原価を定格出力1ワット当たり0.68元(約15円)と推計。これが製品の性能と品質を保証できる最低水準であり、競争入札に原価を下回る価格で応札するのは違法行為に当たると苦言を呈した。 (財新記者:趙煊) ※原文の配信は10月31日
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